押さえておきたいヒューリスティック分析の基礎知識
日々Web上では、さまざまなサービスや技術が進化し、環境が変容しています。Webサイトも、それらの変容に合わせて調整していくことが必然となっています。
調整する際に、何をどのように調整すべきか判断するために、Webサイトを評価・分析します。その方法は、いくつかありますが、今回は、古くから行われている分析法「ヒューリスティック分析」について、取り上げたいと思います。
ヒューリスティック分析は、Webサイトの改善を目的とし、WEBの専門家が、自らの経験からインターフェイス上の改善点を洗い出す分析方法のことです。原則、WEBの専門家が取り扱う分析方法ですが、簡易的に調査を行うことが可能です。今回は、ヒューリスティック分析を行う上での基本となる部分をご紹介します。
ヒューリスティック分析の準備
ヒューリスティック分析では、ユーザーがWebサイトを利用した場合に、ストレスに感じそうな部分など、WEBサイトにおける課題を洗い出します。
主に「UI設計」「デザイン性」「操作性」などを基準にチェックを行いますが、チェックを行う前に、そもそもそのサイトがどういった性質のものなのかをしっかりと把握しておく必要があります。そのため、下記の5つの項目をしっかりと確認し、サイトの位置づけを確認しておきましょう。
1. ターゲット
サイトに訪問する閲覧者の属性を設定します。性別、年代、趣味嗜好、年収、家族構成、職業など、詳細なペルソナを決めておくといいでしょう。
2. サイトの目的
サイトの目的とは、サイトを通じて得たい効果のこと。購入、集客、会員登録、ブランド理解……など。なぜサイトが必要になったのか原点に戻って整理しましょう。
3. 競合の設定
自社サイトをサービスや製品などで競合になると思われるサイトを3〜5社剪定します。選定する際は見たときにデザイン性が優れていると感じるサイトにしましょう。
4. 端末の設定
PCサイトか、スマートフォンサイトか。どちらを優先するか、両方とも分析するかで、チェック項目設計が変わってくるので、予め決めておきましょう。
5. 調査対象ページ
調査するページが増えれば増えるほど、時間を要してしまうので、ユーザーの動線を考え、アクセス数が多くなるトップページやグローバルナビゲーションに順ずるページなど、ページの優先順位を決めておくといいでしょう。
ヒューリスティック分析の実施
5つの調査前提が整理できたら、実際にWebサイトを閲覧しながらチェックリストを作成していき、実施しましょう。チェックリストは、誰にどのように何の目的でサイトを設計するかによって変わってきますが、ここでは部分的な一例をご紹介します。
ヒューリスティック分析におけるチェックリストの一例
1. サイト構造
- 主要カテゴリをグループ化してわかりやすくする
- 複数カテゴリに同じコンテンツを置かない
- 情報の深さ・幅・量のバランスをとる
2. ナビゲーション
- ナビゲーションの規則を統一させる
- ナビゲーションのないページを設けない
- ナビゲーションは視覚的にコンテンツと区別できるようにする
3. 情報の視認性
- 情報のまとまりごとにレイアウトを組む
- 重要な情報は目立つように上部に配置する
- 情報を詰め込みすぎないように、優先順位をつけて、デザインにメリハリを持たせる
4. ユーザーサポート
- ユーザーからのコンタクトの手段を限定しないようにする
- ユーザーの利用条件や制限を一方的に限定しない
- ユーザーからの疑問が解決できるようにFAQなど設けている
など
以上のように、サイトの在り方に合わせて作成したチェック項目を見ながら、対象ページと、競合サイトを比較していくと、改善点を見出しやすくなります。
ヒューリスティック分析のメリットとデメリット
このように、ヒューリスティック分析は、被験者を必要としないため、あまり費用をかけることなく比較的短時間で分析できるのがメリットです。
また、先ほどのご紹介したようなチェックリストで、しっかりと項目が網羅されているものがすでに手元にあれば、分析者のレベルに依存せずに分析を行うことも可能です。
専門家でなくても、一定水準の評価を短期間で行えます。
一方、デメリットとしては、分析者の作業のみで完結するため、分析者の知見に偏ってしまうところがあります。Webサイト改善のための案出しや、優先度を判断するためには、ユーザビリティに関する知識・経験が必要になるため、ユーザビリティの知識が高いWEBディレクターや、WEB分析の専門家に実施させる必要があります。
まとめ
ヒューリスティック分析は、正しく対象サイトの目的・構造を把握し、チェックリストさえ作れれば、ある程度なら簡単に行う事ができます。
そのため、初期ステップとしてヒューリスティック分析を行うと良いかと思いますが、分析者の知見に偏らないためにも、別途でユーザーテストやグループディスカッションなどで、分析結果の精度を上げていくとより良いでしょう。