ユーザー視点
基本的な意味とマインドセット
コンテンツや UI を判断する際、自社の事業都合や好みを完全に切り離し、「読み手はどう感じるか」「ユーザーは何の用事(ジョブ)を済ませるために来たのか」「次に何をしたいか」を起点に見る姿勢です。
Web 担当者のディレクション能力の中核を成す技能であり、「確証バイアス(自分に都合の良い情報だけを集めてしまう心理)」を徹底的に排除し、ペルソナに自分を憑依させる(自分事化する)力と密接に関連します。
現場における判断の軸
基本となるのは「ユーザー視点 × 競合視点の両輪」で見ること、そして「自社のひいき目を完全に抜く」ことです。作り手として「これは素晴らしい!」と自画自賛したくなる内容を、あえて冷めた一読者として「これで本当にスクロールする手を止めるか?」と厳しく問い直す習慣が、品質の分水嶺となります。
実務における鍛え方と具体的なアクション
脳内の妄想で終わらせないための、泥臭い行動が求められます。
- 一次情報の獲得:営業担当へのヒアリングや、カスタマーサポート(CS)に寄せられるリアルなクレームから、ユーザーの「生の声」を泥臭く拾い上げる。
- コンテンツのスクリーニング:記事や LP公開前に初見ユーザーのつもりで読み返す。業界用語に対して「これ、お客様の現場で本当に使う言葉か?」と立ち止まる。自社の自慢(受賞・実績・売上)を「ユーザーが知りたい情報か」で容赦なく取捨選択し、差別化(差別化戦略)を「ユーザーが選ぶ理由」に変換する。
- 客観性の導入とデータ観察:月次で第三者(別部署や友人)にレビューを依頼する。セッションリプレイ、ヒートマップ、ユーザーテスト等のツールを用いて実際の行動データを観察する。
Web 担当者が陥りやすい落とし穴とリアルな対策(組織の壁)
- 「自社目線」への無意識の逃避:口では「ユーザー視点」と言いながら、業界用語を「みんな分かるはず」と仮定し、自社のひいき目を「当社は本物だから」と正当化する。第三者の指摘を「素人の感覚的な意見」として棄却し、ペルソナをテンプレの穴埋め作業だけで済ませて深く描かない。
- AI への丸投げ:生成 AI に「ユーザー視点で書いて」と雑な指示を出し、誰も傷つかないが誰にも刺さらない薄っぺらい一般論の原稿で満足する。
- 【最重要】経営層の「鶴の一声」による崩壊:実務で最大の壁となるのが、上司や社長の「うちの強みはコレだから一番上に大きく載せろ」という独善的な指示です。この組織の力学に対抗するため、担当者は自身の主観的な意見ではなく、「ヒートマップの離脱データ」や「ユーザーテストで顧客が迷っている動画」という揺るがぬ事実(客観的データ)を盾にして論理的に説得するしたたかさを持つ必要があります。
言葉をよく利用する人
- Web 担当者(発注側)
- マーケター
- ライター / コピーライター
- デザイナー
- ディレクター
会話上での使用例
記事原稿の公開前レビューを担当者が依頼する場面
-
マーケター
記事原稿、業者から上がってきました。問題なさそうなのでOKを出しますね。
-
Web担当者
出す前に一度、ペルソナの「中小企業のWeb担当者、30代後半」になりきって通して読んでみてもらえますか。ユーザー視点で「読み終わったあと次に何をしたくなるか」が一文で書ければ、その先のCV導線の設計にも活きてきます。
自社の自慢が前面に出すぎたコピーを相談された場面
-
営業
LPに「業界トップ実績1,200社」って大きく出したいんですよね。
-
Web担当者
ユーザー視点で考えると、読者が知りたいのは実績の数より「自分の課題が解決できるか」なんです。「1,200社の課題を解決してきた実績」のように、自社の数字をお客様にとっての価値に翻訳しませんか。
-
営業
なるほど、数字だけ出しても刺さらないわけか。その言い回しでいきましょう。