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第2章 Lesson 2-1 / 読了 約13分

サイトの目的を明確にする — サイトの目指す方向性を共有する

この記事でわかること

  • サイトの目的とは何か(ビジネス課題との関係)
  • 目的を言語化する 要件整理(何を / 誰に / どう感じて / どう行動)
  • 目的を関係者に共有して合意を取る進め方
  • 目的達成の手順・計画・予算・承認までの段取り

第 1 章で「Web担当者はコミュニケーションを管理する人」と捉え直しました。 第 2 章はその「コミュニケーション」の中身を、社内で言語化していくフェーズです。 最初の Lesson は、すべての出発点になる「サイトの目的」の言語化を扱います。 ここを曖昧に進めてしまうと、業者選びも、デザインも、運用も、後からブレてしまいがちです。

1. サイトの目的とは何か

1-1. ビジネス課題を把握する

Web サイトの目的を考える前に、出発点として押さえたいのが 自社のビジネス課題 です。 「売上を伸ばしたい」「採用を強化したい」「問い合わせを増やしたい」「ブランドの信頼を高めたい」 — 会社には必ず、解決したい課題があります。 Web サイトは、その課題を解決するための手段の一つにすぎません。 だからこそ、まずは「自社が今、何に困っていて、何を実現したいのか」を、経営層や各部門から把握するところから始めます。 ここが曖昧なままだと、サイトの目的もぼやけてしまいます。

1-2. Web コミュニケーションによる課題解決

把握したビジネス課題のうち、Web サイト(Web コミュニケーション)で解決できる部分はどこか を見極めます。 第 1 章で「Web担当者はコミュニケーションを管理する人」と捉え直しました。Web サイトは、会社と顧客・求職者・取引先などをつなぐコミュニケーションの場です。 例えば「採用を強化したい」なら、求職者に自社の魅力を伝えて応募につなげる、というのが Web で担える部分です。 逆に、Web だけでは解決しない課題もあります。「どこまでを Web で担うのか」を切り分けることが、目的設定の第一歩です。

1-3. サイトタイプ別の目的パターン

サイトのタイプによって、典型的な目的のパターンがあります。自社のサイトがどれに近いかを知っておくと、目的を言語化しやすくなります。

  • コーポレートサイト:会社の信頼性を伝え、問い合わせや取引のきっかけをつくる
  • サービス / 商品サイト:価値を伝え、申込・購入・資料請求につなげる
  • 採用サイト:求職者に自社の魅力を伝え、応募につなげる
  • オウンドメディア:見込み客に役立つ情報を届け、認知や中長期の関係をつくる
  • EC サイト:商品を見つけてもらい、購入してもらう

もちろん、これらは組み合わさることもあります。自社のサイトが「どのタイプを主に担うのか」を意識すると、次の要件整理がスムーズになります。

1-4. 「カッコいいサイト」は目的ではない

ここで一つ注意です。「カッコいいサイトにしたい」「オシャレに作りたい」 — これは目的になりません。 理由は単純で、主観だから です。主観で発注すると業者に意図が伝わらず、提案もブレます。社内レビューでも人によって「カッコいい」の中身が違って判断が割れ、完成後に「思っていたのと違う」で揉めやすくなります。 「カッコよさ」自体を否定しているわけではありません。目的が決まってから、それを達成するためのデザイン上の選択肢として「カッコよさ」が現れる、というのが正しい順序です。 順序を逆にしないこと、そしてその順序を自分自身が守ることが、担当者の最初の仕事です。社内から「カッコよくしてほしい」と言われたときも、「カッコよさは結果です。まず誰に何をしてほしいサイトかを先に決めましょう」と返せるようにしておきましょう。

1-5. 目的は 1 つだとは限らない

目的は、必ずしも 1 つとは限りません。「サービスの問い合わせも増やしたいし、採用も強化したい」のように、複数の目的が出てくることはよくあります。複数あること自体は問題ありません。 ただし、サイトのトップから前面に押し出す「主軸」は 1 つに絞る のがコツです。主軸以外は「副軸」として、別ページ・別動線で配置します。 訪問者は最初の数秒で「自分向けか」を判断するため、複数の主軸が並ぶと、結局どれも自分事として受け取れず離脱しやすくなります。 主軸を見極める基準は、売上貢献度・経営層の優先度・期日の近さ・関係者の期待 の 4 つ。複数の目的を洗い出したうえで、主軸を 1 つ決めておきましょう。

2. 目的のための要件整理 — 4 つの問い

目的を具体的に言語化するために、次の 4 つを整理します。 業者選定や RFP(制作会社に依頼内容をまとめて渡す提案依頼書)の作成に動く前に、この 4 つを社内で固めておきたいところです。 答えが揃わないまま業者に投げると、提案を評価できず迷走しやすくなります。

2-1. 何を伝えたいのか

商品 / 会社 / 制度 / 採用 / サービス / ブランドの世界観 — このうち、何を主に伝えるサイトなのか。 複数あり得るので、まずは全部書き出してみましょう。後で主軸を 1 つに絞ります。

× 悪い例うちの良さを全部
〇 良い例主力サービスの◯◯と、その導入実績

2-2. 誰に伝えたいのか

顧客 / 求職者 / 取引先 / 投資家 / 社内のメンバー — このうち、メインで届けたい相手は誰か。 これも複数あり得ます。ターゲットが複数なら、それぞれを書き出してから優先順位を付けます。

× 悪い例みんな
〇 良い例未経験から Web 職を目指す 20 代の求職者

2-3. その人にどう感じてほしいのか

信頼 / 安心 / 専門性 / わくわく / 真摯さ / 革新性 — このあたりがブランディングの軸になります。 「カッコいい」のような主観表現ではなく、相手の感情として何を引き出したいかを言語化します。

× 悪い例カッコいいと思ってほしい
〇 良い例この会社なら安心して任せられそう、と感じてほしい

2-4. その人にどう行動してほしいのか

問い合わせ / 購入 / 応募 / 資料 DL / 電話 / 来店 / シェア — このうち、サイトの主目的になる行動は何か。 ここが定まると、Lesson 2-4 で扱う KGI / KPI(目標とその達成度をはかる指標)が逆算できるようになります。

× 悪い例サイトを見てほしい
〇 良い例サービス資料をダウンロードしてほしい

整理した 4 つは、「◯◯(誰)に、△△(何)を伝えて、□□(印象)を持ってもらい、◎◎(行動)してもらう」 という 1 文にまとめると、関係者で共有しやすくなります。 良い例は「子育て中の共働き夫婦に、自社の家事代行サービスを伝えて、安心感と『任せられそう』という印象を持ってもらい、無料体験に申し込んでもらう」。 逆に「みんなにうちの良さを伝えたい」「カッコよく見せて知名度を上げたい」は、誰に・何の行動を期待しているかが曖昧で、このまま進めると必ず途中で揉めます。

テンプレ DL:サイト目的言語化シート(4 つの問い版)(本書のテンプレ集に収録予定)

3. 目的を関係者に共有する

言語化した目的は、担当者ひとりで抱えず、関係者に共有して合意を取ります。 立場によって見ている景色が違うため、早い段階で目的を共有し、認識を揃えておくことが、後のブレを防ぎます。

3-1. 誰に伝えるのか

まず「誰に共有すべきか」を押さえます。 経営層(最終的な意思決定者)、各部門(マーケ・営業・人事・経営企画など、目的に関わる部署)、そして実制作を担う 業者。 関係者を洗い出し、それぞれに目的を共有して認識を揃えます。 特に経営層の合意は、後から「聞いていない」とひっくり返されないための土台になります。

3-2. 仮置きでよいので早く共有する

完璧な答えが出るまで待っていると、企画は永遠に進みません。 経営層やキーパーソンに「今すぐ答えられない」と言われたら、「仮置きで構いません。後から修正できる前提で、今日時点の仮の答えを伺えますか?」 と返します。 仮の目的を早めに共有し、打ち合わせのたびに磨いていく、という進め方が現実的です。

3-3. 意見が割れたら部門ごとに出して統合する

マーケ・営業・人事・経営企画 — 複数の部門が関わると、目的の答えは必ず割れます。 最初から 1 つにまとめようとせず、まず部門ごとに「何を / 誰に / どう感じて / どう行動してほしいか」を出してもらってから、後で統合する のが現実的です。 各部門の答えを並べたうえで、主軸を 1 つに絞り込んでいきます。

3-4. 合意は口頭で終わらせず文書に残す

共有して合意が取れたら、その内容は 必ず文書に残します。 口頭合意のまま進めると、後から「そんな話だったか」と認識がずれ、デザインや原稿の段階で揉めます。 前出の「1 文にまとめた目的」を関係者全員が見られる場所に置き、判断に迷ったらそこに立ち返れるようにしておきましょう。

4. 目的達成の手順を考える

ここまでで「目的を決めて、共有する」という主題は完了です。ここからは、決めた目的を 動き出せる形にするまでの段取り(手順・計画・予算・承認)を、目的とひとつながりのものとして押さえます。手順・計画・予算・承認それぞれの詳しい進め方は後の Lesson で扱うので、ここでは「決めた目的をどう実行につなげるか」の全体像がつかめれば十分です。 まずは手順から。目的が「ゴール」なら、手順は「ゴールまでの道筋」です。主軸の目的から逆算して道筋を描いておくと、サイトに何を持たせるべきかが見えてきます。

4-1. 目的から逆算して打ち手を洗い出す

主軸の目的から逆算して、必要な打ち手を洗い出します。 例えば「問い合わせを増やす」が目的なら、見つけてもらう(集客)→価値を伝えて納得してもらう(コンテンツ)→迷わず問い合わせできる(導線・フォーム) といった要素に分解できます。 目的を、訪問者の行動の流れに沿って分解するのがコツです。

4-2. サイトに必要なページ・機能を考える

打ち手をもとに、必要なページや機能を考えます。ポイントは、思いつくページを並べるのではなく、目的から逆算して導く ことです。 たとえば目的が「問い合わせ」なら、信頼してもらう材料(会社案内・実績)、比べて検討してもらう材料(料金・事例)、不安を消す材料(よくある質問)、そして迷わせない問い合わせ導線(フォーム)、という具合に、訪問者が動くのに必要な役割からページを割り出します。 こうして出したページを、目的への効き目で優先順位を付けて並べます。 具体的な情報設計(サイトマップ)は Lesson 2-5 で扱いますが、ここでは「目的に必要な要素」をざっくり並べておけば十分です。

4-3. Web で完結しない部分も見ておく

すべてを Web で完結させる必要はありません。 問い合わせ後の営業対応、資料送付、電話フォロー、来店 — Web の外で起きることも含めて「目的達成までの流れ」を眺めておくと、サイトに持たせるべき役割が明確になります。 Web はあくまで一部、という視点を忘れないようにしましょう。

4-4. 手順は仮説でよい

この段階の手順は、あくまで仮説で構いません。 Web サイトは公開後にデータを見ながら改善していくもの(Lesson 8-4)。 完璧な道筋をいきなり引こうとせず、「目的 → 打ち手 → 必要なもの」の流れを一度描いてみることが大切です。

5. 手順を計画に落とし込む

手順が見えたら、それを実行できる「計画」に落とし込みます。 誰が・いつ・何をするのかを具体化する段階です。

5-1. スケジュールに落とす

公開希望日から逆算して、企画・デザイン・制作・原稿・確認・公開の各工程をスケジュールに並べます。 特に原稿や写真など 「自社が用意するもの」は遅れがち なので、余裕を持たせておきましょう。 自社の準備が遅れると、プロジェクト全体が後ろにずれ込みます。

5-2. 体制と役割分担を決める

社内の誰が何を担い、どこからを業者に任せるかを決めます。 第 1 章で触れたとおり、「作業」は分担できますが、「判断・承認・責任」は担当者が持ちます。 社内の関係者と業者で担当範囲をはっきりさせておくと、後の「これは誰の仕事?」を防げます。

5-3. 優先順位とフェーズ分けを考える

最初から全部を完璧に作ろうとせず、主軸に直結する部分を優先 します。 予算や時間に制約があれば、すべてを一度に作らず、フェーズを分けて段階的に進める選択肢も持っておきましょう。 「まず主軸を達成する最小構成で公開し、運用しながら育てる」という進め方は、現実的で失敗が少ない方法です。

6. 予算を検討する

計画が見えてくると、必要な予算の輪郭もつかめてきます。 企画段階で予算感を持っておくと、業者選定や見積もりの場面でブレません。

6-1. 初期費用と運用費の両方で考える

Web サイトの費用は、作るときの 初期費用 だけではありません。 公開後の 運用費(保守・更新・サーバドメイン・広告など)も、毎月・毎年かかります。 初期費用だけで判断すると、運用フェーズで予算が足りなくなりがちです。3 年など中長期の総額 で見ておくと安心です。 見積もりの詳しい読み方は Lesson 3-3 で扱います。

6-2. 主軸に予算を集中させる

予算は均等に薄く配るのではなく、主軸に直結する部分へ集中 させます。 たとえば採用が主軸なら、社員インタビューやオフィス撮影、応募までの導線に厚く配分し、会社沿革のような優先度の低いページは既存素材で軽く済ませる、といった具合です。 優先度の低いものはフェーズを分けて後回しにしてもかまいません。「目的の達成に、その費用は本当に効くのか」を判断軸にすると、予算配分で迷いにくくなります。

7. 社内の承認を取る

目的・計画・予算が固まったら、最後に社内の承認(決裁)を取ります。 ここを通さずに走り出すと、後から「聞いていない」とひっくり返され、それまでの作業が無駄になりかねません。

7-1. 承認を得るための材料を揃える

承認を得るには、決裁者が判断できる材料を揃えます。最低限、次の 4 点を 1 枚にまとめておくと、説明がスムーズです。

  • 何のために(目的・解決したいビジネス課題)
  • 誰に届けて何を実現するか(要件整理の 1 文)
  • いくらかかって、どんな成果を狙うか(初期 + 運用費と、KGI / KPI)
  • いつ公開するか(おおまかなスケジュール)

第 1 章で触れたとおり、承認には責任が伴い、判断・承認・責任は担当者が持ちます。 決裁を「通すための手続き」と捉えず、自社として「本当にこの目的・この予算で進めてよいか」を確認する場として活用しましょう。 KGI / KPI の立て方は Lesson 2-4 で扱います。

8. やってはいけない 3 つのこと

8-1. 目的がブレる

打ち合わせのたびに目的が変わると、デザインも原稿も業者選びもやり直しになります。 最初に言語化した目的(要件整理の 1 文)を、各工程の判断基準として据え続けましょう。 3-4 で触れたとおり文書に残しておけば、判断がブレたときに立ち返る先ができます。

8-2. 見合わない予算ですべてを叶えようとする

予算を考えずに機能を盛り込むと、主軸に使うべきお金が薄まり、どれも中途半端になります。 まず主軸に予算を集中させ、難しいものはフェーズを分ける。 予算と目的のバランスを取るのが、担当者の役割です。

8-3. 極度に失敗のリスクを考えすぎる

リスクを恐れて何も決められない、完璧を求めて公開できない、というのも失敗の一つです。 Web サイトは公開後に改善していけるもの(第 8 章)。 仮説でよいので一度形にして、走りながら磨いていく姿勢が大切です。

ここまでお疲れさまでした。サイトの目的を言葉にする作業は、最初は答えがなかなか定まらず、もどかしく感じるかもしれません。 でも、完璧な 1 文をいきなり書こうとしなくて大丈夫です。 まずは「4 つの問い」を書き出して、仮置きでいいので主軸を 1 つ選んでみる。それだけで、サイトづくり全体の判断軸がぐっと見えやすくなります。 目的は走りながら磨いていけるものなので、肩の力を抜いて、最初の一歩を踏み出してみてください。