競合サイトの調べ方 競合リサーチを事務的に処理してはいけない
この記事でわかること
- 競合分析の本当の目的(真似ではなく「どう競争するか」を決めること)
- 競合を 直接・間接・ベンチマーク の 3 種類に分けて集める考え方
- テンプレに埋める前に 競合を穴があくほど観察 する進め方
- 観察に使う 4 つの軸(流入・ユーザー・見せ方・感じさせ方)
- 観察から 「どこで差を出すか」 を導き、自社のポジションを決める手順
- 「真似する」と「学ぶ」 の違い
Lesson 2-1 で「目的」、2-2 で「ターゲット」を固めました。 次は「自社をどこに位置付けるか」を決めるための競合分析です。 でも本書では、よくある「比較表を埋める作業」とは違うやり方を提案します。 最初の数時間は、ひたすら観察に使ってみましょう。
1. 競合分析の目的を、まずハッキリさせる
1-1. 競合の「真似」は目的ではない
競合を見るのは、真似するためではありません。 そこが入口だと、競合の良いところを写すだけで終わってしまい、自社のサイトが「劣化コピー」になります。 競合がやっていることは、競合の事情と戦略から出てきたものです。 そのまま自社に持ってきても刺さりません。
1-2. 本当のゴールは「どう競争するか」を決めること
競合分析のゴールは、自社のポジションを決めること です。 競合の戦略を理解した上で、「自社はどこで戦うか」「どこで差を出すか」「どこは戦わないか」を決めます。 模倣ではなく、どの強みを前面に出し、どこは競合に譲るかを決める作業です。 この視点で見ると、競合サイトの見え方が変わります。
1-3. 目的を見失うとただのサイト見学になる
目的を見失うと、競合分析は「いいサイトでしたね」「凝った作りでしたね」で終わります。 社内の打ち合わせで「ベンチマーク 10 サイト見ました」と報告しても、それで何かが決まるわけではありません。 せっかく時間をかけるなら、何かが決まる競合分析にしたいところです。
2. 競合は 3 種類に分けて集める
「競合」を一括りにせず、3 種類に分けて集めると整理しやすくなります。 それぞれの役割が違うからです。
2-1. 直接競合
同じサービスや製品を、同じ顧客に向けて提供している会社です。 最もよく比較される存在で、観察の中心になります。 各 3〜5 サイトを目安に集めてみましょう。
2-2. 間接競合
違うサービスを提供しているけれど、顧客の 時間や予算 を奪い合う関係にある会社です。 たとえば家事代行と高機能家電は、商材は違えど「家事の負担を減らしたい」予算を奪い合います。 間接競合の存在を見落とすと、本当の競争相手が見えません。
2-3. ベンチマーク
業界外でも、参考にしたい優良サイトをベンチマークとして集めます。 「同じ業界では珍しいけれど、別業界ではこういうやり方がある」という発見の源泉になります。
集めるとき注意したいのが、自社と同規模帯のサイトを中心にする ことです。 大企業の凝ったサイトばかり見ると、自社の規模では実現不可能な事例ばかり集まります。 観察の参考にならない競合は除外して構いません。
3. 競合の探し方
競合を集める手段は複数あります。 一つだけに頼らず、複数を組み合わせると見落としが減ります。
- Google 検索:自社のターゲットが打ちそうなキーワード(商品名だけでなく「◯◯ 比較」「◯◯ おすすめ」など、迷っている人が打つ語も)で実際に検索し、上位に出てくる会社をリストアップ
- 業界団体・展示会・取引先:業界に詳しい人のネットワークから紹介してもらう
- SimilarWeb 等のツール:無料範囲でも、競合のトラフィック傾向がざっくり把握できる
- 営業からの情報収集:「他社と比較された」「乗り換えで来た」声を営業から聞く
集めすぎると、一社ずつの観察が浅くなります。まずは 直接競合 3〜5 社 を軸に、間接競合とベンチマークを各 2〜3 社 ほどに絞ってから観察へ移りましょう。 自社と規模がかけ離れたサイトは参考にしづらいので、早めに外して構いません。
4. テンプレートの穴埋め作業をやめよう
4-1. テンプレに早く落とし込もうとしない
競合分析というと、すぐに比較表(エクセルの一覧)を作りたくなります。 でも、これが落とし穴です。 表を埋める作業に頭が持っていかれると、本質が見えなくなります。 表に書かれた項目を埋めることに集中して、その外側にある重要な気付きを取りこぼすのです。
4-2. 各競合サイトを「ユーザーになりきって」触る
まず、各競合サイトを 30 分以上 じっくり触ってみましょう。 スマホで・PC で、初訪問の気持ちで、実際にサービスを検討する立場で。 時間をかけて触ると、表面的な印象ではなく、サイトの動線・戦略・配慮が見えてきます。
4-3. 観察ノートはフリーフォーマット
観察中はメモを取りますが、フォーマットは決めずにフリーフォーマットで書くのがおすすめです。 気づいたことをそのまま書き留めるだけです。 表に押し込もうとすると、感じたことが切り捨てられます。
4-4. 「見たこと」と「感じたこと」を分けて書く
観察ノートで意識したいのは、事実と解釈を分ける ことです。 事実:「ファーストビューに大きな商品写真、右上に CTA ボタン、コピーは 12 文字」。 解釈:「高級感がある、専門性が高そうに見える、急かされない印象」。 両方書きますが、必ず分けて書きます。 後でレビューするとき、自分の主観と客観をすぐ区別できる状態にしておきます。
4-5. 比較表は観察の後に作る
観察ノートが揃ったら、ようやく比較表に整理します。 順番は 観察 → 整理 → 表化。 この順序を逆にしないのが大切です。 表化はあくまで最後の整理ツールであって、観察そのものではありません。
5. 現場で見る 4 つの観察軸
観察するときに使う 4 つの軸を紹介します。この 4 軸に沿って見ると、競合サイトが「どんな戦略で作られているか」を読み解きやすくなります。
5-1. 軸 1:どんな流入で人を獲得しているか
SEO(検索からの流入)/広告/SNS/直接アクセス/被リンク(他サイトに貼られたリンク) — 競合がどこから人を集めているかを推測します。 競合サイトの流入は外から正確にはわからないので、SimilarWeb(サイトのおおよそのアクセス傾向を推定するツール)や ahrefs(被リンクや検索キーワードを調べるツール)の無料範囲、SNS の投稿頻度や反応数から、ざっくり推測します。 なお Search Console は自社サイトの検索データを見るツールで、競合の流入把握には使えません。競合はあくまで外から見える情報からの推測、と割り切りましょう。 そのうえで「主力チャネルはどこか」「副次的なチャネルは何か」を仮説立てしてみましょう。
5-2. 軸 2:どんなユーザーを獲得しているか
サイトを見ていると、ターゲットの解像度が見えてきます。 使われている写真、コピーの語彙、想定されている知識レベル、価格帯 — このあたりから「この競合は、誰に向けているか」を読み取ります。 自社のターゲットと一致しているか、ズレているかを判定する材料になります。
5-3. 軸 3:商材・サービスをどう見せているか
写真、コピー、配置、情報量、スペック表 vs 物語型 — 商材の見せ方を観察します。 スペックを並べる訴求なのか、ストーリーで魅せる訴求なのか、価格を前に出すか、価値を前に出すか。 各競合の戦略がここに現れます。
5-4. 軸 4:どう感じさせているか
サイト全体のトーン、つまり訪問者にどんな印象を残しているか。 信頼 / 高級感 / 親しみ / 専門性 / 革新性 / 安心感 — このあたりの軸で、サイトの「感情面の戦略」が見えます。 Lesson 2-1 の「どう感じてほしい」の問いと突き合わせると、自社と競合の感情訴求のズレが浮かびます。
この 4 軸を意識して各競合サイトに 30 分ずつ向き合うと、「なぜこの配置なのか」「なぜこの見せ方なのか」と、競合の狙いを逆算して読めるようになっていきます。
6. 観察から「自社との比較特性」を導く
6-1. 観察で見えてきた競合の戦略をリストアップ
1 競合あたり、5〜10 個の戦略要素をリストアップしてみましょう。 「ファーストビューでブランド世界観を出している」「料金表を出さず問い合わせ起点にしている」「事例コンテンツが豊富」「比較表を堂々と置いている」 — このような粒度です。
6-2. 自社と比較する
リストアップした戦略を、自社と比較します。 判定は次の 4 分類です。
- 自社と同じ:既にやっている、差別化要素にならない
- 違うが、戦えない:競合が強い領域、無理に戦わない
- 違うが、上回れる:自社の強みが活かせる、ここで差を出す
- 違うが、自社もやるべき:今やっていないが、追従する価値あり
6-3. シーンごとに比較手段を検討
「5. 現場で見る 4 つの観察軸」で見た 4 軸ごとに、比較手段を考えます。 たとえば「流入」なら競合が強い SEO は正面から狙わず手薄な SNS で差を出す、「見せ方」なら競合がスペック訴求なら自社は導入事例の物語で見せる、というように、軸ごとに「競合の出方」と「自社の打ち手」をセットで書き出します。 シーンごとに分解すると、自社の打ち手が具体化します。
6-4. 「どこで差を出すか」を 1〜3 個に絞る
最後に、自社が差を出すポイントを 1〜3 個 に絞ります。 全部で勝とうとすると、かえって勝ちにくくなります。 主軸を絞って、そこに集中投資する。 これは Lesson 2-1「サイトの目的を明確にする」で触れた「主軸を 1 つに絞る」と同じ姿勢です。
テンプレ DL:観察ノート → 比較整理シート(本書のテンプレ集に収録予定。観察を整理する後段のテンプレ)
7. 競合に並ぶのではなく競合に勝つ
7-1. 真似は並ぶ行為
そのまま使う、なぜ採用したかを確認しない、自社で意味を持たない — これが「真似する」です。 結果として、サイト全体がチグハグになります。 競合の事情から出た選択を、自社の事情にフィットしないまま持ち込むからです。
7-2. 競合から勝ち筋を見つける
「なぜ競合がそれを選んだか」を仮説立てして、自社の目的に合うものだけ持ち帰る — これが「学ぶ」です。 競合の判断軸を理解した上で、自社の判断軸で取捨選択する。 そうやって取り入れたものは、自社サイトの中で自然に機能します。
7-3. 持ち帰る前に確認する 3 つの問い
競合の打ち手を取り入れるか迷ったら、次の 3 つに答えられるかで見分けます。すべて「はい」なら「学ぶ」、どれかで詰まるなら「真似」になりかけています。
- 競合がそれを採用した理由を、自分の言葉で説明できるか
- それは自社の目的・ターゲットと合っているか
- 自社の体制・予算で、無理なく実行・維持できるか
8. 失敗しがちな競合分析
- デザインだけ見て真似する(目的が違うと刺さらない → 目的と動線もセットで観察する)
- 業界トップの大企業ばかり見る(規模が違って参考にならない → 自社と同規模帯を中心に選ぶ)
- 1 人で完結する(主観に偏る → 営業・現場・経営など複数の視点で見て、必ず関係者と共有する)
- 1 回で終わらせる(競合も動いている → 半年に 1 回は見直す)
9. 競合分析をシェアする
競合分析の成果は、Lesson 3-2 で扱う RFP(提案依頼書)にぜひ反映しましょう。 制作会社に渡す資料に「観察結果 + 何を学ぶか + 何で競争するか」を書き入れます。 こうすると、制作会社側の理解が揃い、提案がブレません。 競合観察を社内資料に閉じ込めず、外向きの資料に展開するのが効率的です。
競合分析は、最初は「ただサイトを眺めているだけ」に感じるかもしれません。 でも、目的を口に出して、ユーザーになりきって 30 分触り、見たことと感じたことを分けて書く — この観察を一社ぶんでも丁寧にやってみると、競合サイトの見え方が確実に変わってきます。 比較表はそのあとで十分です。まずは一社を、時間をかけてじっくり観察するところから、気軽に始めてみてくださいね。