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第2章 Lesson 2 / 読了 約13分

ターゲットとペルソナ — 相手を想い描いて適切にアプローチする

この記事でわかること

  • ターゲットとペルソナの違いと、ペルソナを過信しない理由
  • 使いにくいペルソナ矛盾から見抜くチェックの観点
  • ペルソナを想像だけで作らないための実データの集め方
  • BtoB「使う人を入口に、決める人を資料で後押しする」動線の作り方
  • ペルソナを「作って終わり」にしない運用のしかた

第2章 Lesson 1 で「誰に何をしてほしいか」を 4 つの問いで言語化しました。 この Lesson では、その「誰に」をもう一段具体化する ペルソナ の話を扱います。 ただし、本書はペルソナを過信しません。 「便利だけど、頼りすぎない」という距離感が大事です。

1. ターゲットとペルソナの違い

用語の整理

まず用語を揃えます。 ターゲット は「集団」を指します。 たとえば「30 代の働く女性」「BtoB のマーケ担当者」のように、属性のまとまりです。 一方、ペルソナ はその集団から代表として描き出す 架空の 1 人 です。 名前、年齢、家族、職業、生活パターンまで具体化された 1 人の人物像、それがペルソナです。

ペルソナを作る意義

ペルソナを作るとどうなるか。 デザインの方向性、原稿のトーン、写真のテイスト、コピーの言い回し — このあたりが一気に揃います。 業者にも「この人物に届ける」と説明できるので、提案や制作の精度が上がります。 抽象的な「ターゲット集団」だけでは、ここまでの解像度は出ません。

ペルソナをすべてにしない

ペルソナの落とし穴も、ここで先に書いておきます。 ペルソナは、ターゲット集団から 切り出した 1 つの例 に過ぎません。 集団全体を代表しているわけではありませんし、その人だけにしか刺さらないサイトを作ろうとする道具でもありません。 過信して中心に据えすぎると、ペルソナ以外のユーザーがサイトに来た瞬間に弾かれてしまう作りになります。 「便利な道具、ただし鵜呑みにしない」というスタンスが正解です。

2. ペルソナの失敗作

使いにくいペルソナの典型例

現場で「これはダメだな」と感じるペルソナには、明確な特徴があります。 辻褄が合わないのです。 たとえばこんな例 — 「年収 300 万円なのに、特別な理由もなくタワーマンションに住んでいる」「毎日のように高級レストランで外食している」。 数字だけ見ると魅力的なターゲット像ですが、実在しません。

ペルソナの矛盾

なぜ矛盾が生まれるか。 たいていの場合、チームの願望 がペルソナに投影されているからです。 「こういう人に来てほしい」「こういう人なら買ってくれるはず」という願望が、属性の数字に出てしまう。 結果として、実在しない理想客の姿が出来上がります。 これは「ペルソナ」ではなく「願望像」です。

矛盾チェック 5 項目

ペルソナを書き終えたら、次の 5 観点で矛盾チェックをしてみましょう。

  • 収入 と 住まい / 支出 の整合性
  • 家族構成 と 自由時間 の整合性
  • 職業 と 情報源 の整合性
  • 年齢 と デジタル習熟度 の整合性
  • 抱える悩み と 行動 の整合性

ペルソナのチェック方法

一番効くのは、ペルソナを 口に出して読み上げる ことです。 シートに書いた属性を一通り音読してみて、関係者全員で「この人、本当に存在しそう?」を確かめます。 違和感のある属性が出てきたら、そこが矛盾の発生源かもしれません。 1 人で書くと矛盾に気付きにくいので、複数人での音読がおすすめです。

3. ペルソナ情報の集め方

矛盾を防ぐ一番の方法は、想像だけで作らないことです。 実在の顧客データから出発します。

既存顧客データ

すでに顧客がいるなら、購買履歴・問い合わせログ・CRM(顧客管理データ)を最初に見てみましょう。 実在の顧客が、何を買って、何を聞いてきて、どんな悩みを書き込んだか。 ここに矛盾のないペルソナの源泉があります。 たとえば問い合わせログなら、質問の言い回しをそのまま拾って、FAQ や見出しの言葉に転用できます。

営業ヒアリング

BtoB なら、営業担当者が日々接している「実在の顧客」の生声が一番の宝です。 営業に時間をもらって、最近受注した 5 社、失注した 3 社の人物像を聞き出してみましょう。 「この担当者はどんな人で、どんな経緯で導入を決めたか」を具体的に語ってもらうと、ペルソナの輪郭が見えてきます。

GA4 / Search Console

数字側のデータも、ペルソナの素材になります。 GA4(アクセス解析)のデモグラフィック(年齢・性別・興味)、Search Console(検索の表示・流入データ)の検索クエリ — このあたりから、実際にサイトに来ている人の属性傾向が見えてきます。 たとえば検索クエリに悩みの言葉がそのまま出ていれば、それはペルソナの「抱えている悩み」欄に書ける生の素材です。

顧客インタビュー

余力があれば、既存顧客 5〜10 人にインタビューしてみましょう。 定性データの宝庫で、数字には出てこない「なぜ買ったか」「何で迷ったか」「決め手は何か」が引き出せます。 インタビューを通して語られた言葉が、そのままペルソナの語彙になります。

「想像だけで作ったペルソナは矛盾を生む」 — この一点だけ覚えておくと安心です。

4. ペルソナシートを作ろう

基礎情報

まず基礎の 6 項目です。 氏名(仮名でも OK)、年齢、職業、家族構成、住まい、年収。 ここは事実ベースの属性なので、矛盾チェックが効きやすいゾーンです。

行動が見える項目

ここがこの Lesson の重要なポイントです。 属性だけのペルソナは使えません。 行動傾向 が見える項目を忘れずに入れておきたいところです。

  • 1 日の生活パターン(朝・昼・夜の時間の使い方)
  • 情報源(SNS・テレビ・口コミ・専門メディアなど)
  • 抱えている悩み(具体的に)
  • 目標(短期・長期それぞれ)

反面も描く

ペルソナは「買う / 使う理由」だけ書きがちですが、それでは半分です。 「買わない / 選ばない理由」もセットで書いておきましょう。 何を不安に思うか、何でためらうか、過去に何で失敗したか。 両面で描くことで、サイトのコンテンツが「不安解消」と「期待強化」の両方に向かいます。

書き終えたら見直し

書き終えたら、必ず見直します。やり方は 【ペルソナのチェック方法】 のとおりで、関係者で音読して「この人、本当に存在しそう?」を確かめるだけで十分です。 不自然な属性が出てきたら、そこが矛盾の可能性です。

5. ペルソナを作るコツ

実務での進め方を 4 ステップに整理します。

  • Step 1:既存データ収集3. ペルソナ情報の集め方 で挙げた 4 つのデータ源を、できるだけ集めます。
  • Step 2:共通点抽出 — 集めたデータから、共通する属性・悩み・行動パターンを抽出します。
  • Step 3:1 人に統合 — 共通点を 1 人の人物像に統合します。ここでペルソナの初稿が完成します。
  • Step 4:関係者レビュー → 矛盾を潰す【矛盾チェック 5 項目】【ペルソナのチェック方法】 を通して、矛盾を一つずつ潰します。これが完成版です。

6. BtoB の場合のペルソナ設計

ここからは、関係者が複数いる法人向けサイトの話です。BtoC や採用サイトが中心の方は、読み飛ばしていただいて構いません。 BtoB では、ペルソナ(架空の 1 人)だけでなく、「誰が導入を決めるのか」まで整理 しておく必要があります。

「使う人」と「決める人」

BtoB のサイトには、特有の動線設計が必要です。 BtoB では、実際にサービスを 使う人(現場担当者)と、導入を 決める人(部長・経営層)が分かれているのが特徴です。 この 2 者は関心事が違うため、それぞれに合わせて設計する必要があります。

まずは「使う人」の目に留まる

Web の入口は 使う人(現場担当者)です。 検索や SNS から最初にサイトに辿り着くのは、ほぼ間違いなく現場の担当者で、決裁者ではありません。 だからサイトの主軸は「使う人」に置きます。

次に「決める人」向けのフォロー資料

使う人が興味を持ったあと、社内で稟議を通すには、決める人(部長・経営層)向けの資料が必要になります。 ここで活きるのが、サイト上に置く フォロー資料 です。

  • DL 資料(製品紹介・料金体系・導入の流れ)
  • 提案書テンプレート(使う人が社内向けに転用できる形)
  • 社内稟議向け説明 PDF
  • 比較表
  • 導入事例(類似業種・類似規模)

これらを「使う人がダウンロードして、社内で配布する」前提で設計します。

商材の性質で戦略が変わる

BtoB の中でも、商材の性質で戦略は変わります。

  • Web 完結型(SaaS(クラウドで使うソフト)の無料トライアル等):「決める人を説得する DL 資料」を主役にします。使う人が自分で社内の承認を取る前提です。
  • 問い合わせ起点型(大型ソリューション等):「使う人と協力して、決める人に納得してもらう進め方」を用意します。営業も関与する前提です。

意思決定マップを用意する

BtoB ペルソナは、ペルソナだけでは不十分です。 意思決定者の構造を 意思決定マップ として可視化します。 担当者(使う) / 部長(承認) / 経営層(予算判断) の 3 層が一般的です。 各層の関心事は別物なので、伝え方も変えます。

BtoB 向け資料の在り方

BtoB サイトを担う Web 担当者の大切な仕事は、「使う人が社内で説明しやすい状態」 を作ることです。 サイト上の DL 資料は、単なるリードマグネット(メールアドレスなどを得るための無料資料)ではありません。 使う人の手に渡って、社内のプレゼン資料として転用される、「使う人の社内提出資料」 です。 そう捉え直すと、資料の作り方が変わります。

7. ペルソナを増やしすぎない

ペルソナは多くて 2〜3 人まで。理想は 1 人です。 ペルソナごとにサイト構造を分岐させると、サイト全体がまとまりを失いやすくなります。 どちらのペルソナにも刺さらない、薄められた表現に着地しがちなのです。 2 人目を作るのは、目的・悩み・検討プロセスが大きく違う相手がはっきりいるとき だけにします。属性が少し違う程度なら、無理に分けず 1 人にまとめて構いません。

複数ペルソナが必要な場合は、サイト全体の構造を主軸ペルソナで設計し、ページ単位で出し分け るのが現実的です。 たとえばトップは主軸ペルソナ向けに最適化し、別ペルソナ向けは専用 LP(その相手だけに向けた訴求ページ)・専用カテゴリに分けて配置します。

8. ペルソナを「作って終わり」にしない運用

ペルソナはシートが完成した瞬間がゴールではありません。 制作中・運用中の判断基準として、繰り返し参照される必要があります。

  • 制作中の判断基準として使う(「このペルソナはこれ見てどう感じる?」)
  • デザインレビューで全員が「ペルソナはどう感じる?」を問いかける
  • 半年ごとに、実データ(GA4・CRM・営業ヒアリング)と突き合わせて見直す

ペルソナは、最初から完璧な 1 人を描こうとしなくて大丈夫です。 実在のデータから少しずつ輪郭を整え、矛盾に気づいたらそのつど直していけば、自然と「使えるペルソナ」に近づいていきます。 便利な道具として上手に付き合いながら、BtoB なら「使う人が社内で説明しやすい状態」を一緒に整えていきましょう。 ここまで読み進めたなら、もう「誰に届けるか」を語れる土台はできています。