フィルター役
概要と「キメラ化」の恐怖
Web 担当者がデザインやサイト構成へのフィードバック工程において担う最重要の役割の一つ。
経営層・営業・広報・法務など、社内から噴出する様々な意見を「自社らしさ」や「ターゲット適合」といった軸で厳しく選別し、制作側(業者)に渡す機能のこと。社内意見をフィルターせずにそのまま業者にぶつけると、各部署の要望をただツギハギしただけの奇妙な化け物デザイン(キメラ)が生まれてしまう。
現場の核心:メッセンジャーからの脱却
核心は、判断軸を持って社内要望の「取捨選択」をすることこそが Web 担当者の最大の責務だという点である。
担当者は、全部の意見を右から左へ業者に流す「ただのメッセンジャー(伝書鳩)」になってはならない。自らが「判断軸に従って意見を選別する責任者」として動かなければ、プロジェクトは最後の最後で必ず「ちゃぶ台返し」に見舞われる。
実務における「判断軸」と運用のコツ
判断軸の例は、ペルソナ・ポジショニング・ブランドトーン・KGI/KPI・ゴールデンルートなど。これらをプロジェクト初期に「要件定義書(クリエイティブブリーフ)」として明文化しておくことが重要。
- 照らし合わせ作業:社内意見が出たら、「これはペルソナの利用シーンで本当に効くか?」「ブランドトーンに合っているか?」を一つずつ照らし合わせる。
- ログ(記録)の保存:意見を通したものだけでなく、「通さなかったもの(却下した意見)」も両方記録しておく。これにより、後で「なぜあの意見を反映しなかったのか」と問われた際に、論理的に説明・防衛が可能になる。
やってはいけない「現場の落とし穴」と防衛策
- 丸呑みによるキメラ化:社内の声が大きい人の意見を全部反映してしまい、結果的に誰にも刺さらないサイトになる。
- 業者への丸投げ:フィルター役を業者に任せてしまう(社内の力学や事情は業者には分からないため、必ず破綻する)。
- ブラックボックス化による恨み:判断軸が曖昧なまま個人の感覚で却下し、「フィルターした理由」を説明できない。または切り捨てた記録を残さず、後で他部署から「無視された」と恨まれる(「お役所仕事」と思われる)。
- 経営層の鶴の一声(HiPPO)への屈服:ターゲットに合わない経営層の意見を無条件で通してしまう。※対策:「社長のアイデアは素晴らしいので、まずはターゲット基準の A 案でリリースし、後日社長のアイデアを B 案として A/B テストしてデータをとりましょう」と、テストを盾にしてかわす技術が必要。
言葉をよく利用する人
- Web 担当者(発注側)
- ディレクター
- プロデューサー
- 広報
- マーケター
会話上での使用例
社内レビュー会でカンプに対して意見がバラバラに出た場面
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営業
もっと明るくして、写真も人物より商品をメインにしてほしいです。
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広報
私はもう少し渋めで落ち着いた印象の方がいいと思います。
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Web担当者
ありがとうございます。ここは私がフィルター役として整理します。ペルソナとブランドトーンの軸で取捨選択して、業者さんに渡す案を1つに絞ります。どの意見をなぜ採否したかは記録して、来週まとめて共有しますね。
経営層の色の指定を通すか相談する場面
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経営層
ボタンの色は緑にしてくれ。
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Web担当者
ご意見ありがとうございます。実はアクセントは赤系で設計済みで、コントラストも確認済みなんです。緑にするとCVボタンの存在感が弱くなる懸念があって。フィルター役として効果検証のデータを揃えますので、それを見てからご相談させていただけますか。
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経営層
データがあるなら、それを見てから決めよう。