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第5章 Lesson 3 / 読了 約13分

写真・イラスト・動画 — 「感じさせ方 × 利用シーン」で選び、権利管理まで整える

この記事でわかること

  • 写真・イラスト・動画を「感じさせ方 × 利用シーン」で選ぶ考え方
  • 動画が利用シーンを限定する理由
  • よくある失敗「間を埋める写真」がなぜ訴求力を失うのか
  • 自社の人物撮影で気をつけたい服装・髪形のポイント
  • 素材を「運用資産」として管理する観点(権利・許諾・退職後の扱いまで)

第5章 Lesson 2 でコピーを扱いました。 この Lesson はビジュアル素材(写真・イラスト・動画)の話です。 Web サイトのビジュアルは「とりあえず入れる」になりがちですが、本書は明確な選定軸と、作った後も使い続ける素材として権利・期限・使える場所を管理する考え方を扱います。

1. 選定軸 — 「感じさせ方 × 利用シーン」で選ぶ

一律ルールは禁物

「写真 vs イラスト vs 動画、どれが正解?」という問いは、答えがありません。 業種・商材・ターゲットで最適解が全く違うからです。

「ユーザーにどう感じさせたいか」で選ぶ

  • 写真:リアルな印象、信頼、実在感
  • イラスト:抽象化、概念の説明、親しみ、わかりやすさ
  • 動画:深い理解、ストーリー、空気感

「ユーザーの利用シーン」で選ぶ

もう一つの軸は、第4章 Lesson 4 でも使った「利用シーン」です。 特に動画は、シーンの制約を強く受けます。

  • 音が出るので、屋外や電車内では再生しにくい
  • 画面への集中が必要なので、ながら見には向かない
  • 隙間時間のスマホユーザーには、再生そのものが重い

業種 × 感じさせたい印象 × 利用シーンの掛け算で決まる

最終的な素材選択は、この 3 つの軸を掛け合わせると整理しやすくなります。 一律のルールではなく、案件ごとに考える必要があります。

2. 写真・イラスト・動画それぞれの特性

写真の特性

リアルさと信頼、そして「ここに本当にある」という実在感を伝えます。 人物・場所・製品など、実在するものを見せたいときの第一選択になります。

  • 向く:社員紹介、実店舗・現場、製品の質感、お客様の声
  • 向かない:目に見えない仕組みや手順の説明。ここは無理に写真を使うより、図解やイラストのほうが伝わります

イラストの特性

抽象化、概念図、親しみ、説明補助、トーンコントロールしやすいのが特性です。 複雑な概念を分かりやすく伝えたいときに活きます。

  • 向く:サービスの流れ図、目に見えない仕組み、やわらかい雰囲気づくり
  • 向かない:実在感や信頼をそのまま見せたい場面。「本当にある」ことを伝えるなら写真が勝ります

動画の特性

深い理解、ストーリー、空気感を作れます。 一方で、再生コストと利用シーン制約があるので、使い所を選びます。

  • 向く:手順の実演、人柄や現場の空気、言葉だけでは伝わりにくい動き
  • 向かない:料金・営業時間・注意事項など、すぐ確認したい情報。これはテキストや図で出したほうが親切です

3. よくある失敗 — 「間を埋める写真」は訴求力を失わせる

「文字ばかりだと寂しいから写真を入れる」が罠

新米担当者がやりがちな罠です。 装飾目的の写真は中身がなく、訴求力を失わせます。

本文と写真がマッチしていないと、読者の頭が混乱する

文章で「効率化」を語っているのに、写真が無関係な人物笑顔だと、訴求がブレます。 読者は「何の話だっけ?」と一瞬考えてしまい、集中力を失います。

「とりあえず写真」は何も伝えていない

ファイル容量や表示速度の負担だけが増え、メッセージは薄れます。 むしろ写真を入れないほうが伝わるケースも多いです。

全写真に「本文との役割」を持たせる

すべての写真に、本文との明確な役割を持たせたいところです。

  • 説明を補強する写真
  • 信頼を作る写真(実人物・実物)
  • 感情を喚起する写真

判定の問い

各写真について、こう問うてみましょう。 「この写真がなかったら、何が伝わらなくなる?」。 答えられないなら、その写真はなくても大丈夫。思いきって外してしまいましょう。

4. ストック画像 vs オリジナル撮影の判断

ストック画像で OK なケース

ストック画像とは、素材サイトで販売・配布されている既製の写真やイラストのことです。 補助的な抽象表現、汎用イメージ — このあたりはストック画像で問題ありません。

オリジナル撮影必須のケース

自社人物、自社製品、現場、信頼を作る箇所 — ここは必ずオリジナル撮影です。 ストック画像で「自社」を装うのは、ユーザーに見抜かれます。

ストック画像の選び方

ハイブリッド戦略

重要箇所は自社撮影、補助はストック画像にする方法が現実的です。 コスト面でも、メリハリのある投資ができます。

5. 自社で撮影・制作するときの担当者の関わり

撮影前:構成・カット割りを業者と詰める

撮影の構成とカット割り(どの場面をどの角度・大きさで何枚撮るかの計画)は、事前に業者と詰めておくと安心です。 当日に決めようとすると時間が足りなくなりがち。 業者にカット表を出してもらうのがおすすめです。

撮影当日:出演者(自社の人)の緊張を解く

実在の社員が出ると信頼が生まれます。 担当者は、出演者が話しやすい空気を作る役回りです。 会話で和ませて、自然な表情を引き出していきましょう。

服装・髪形の準備

本書の独自視点です。 本人は綺麗な服を着ているつもりでも、写真ではシワが目立ったり、地味な印象になりすぎる ことがあります。 髪形も同様です。 事前に服装ガイド(色・無地推奨など)を出演者に伝えておくとスムーズです。 しっかり撮りたいなら スタイリストの検討 も視野に入れてみましょう。

使用権・肖像権・契約の整備

撮影した写真をどこまで使えるか(Web、印刷、SNS、そして本人の退職後)は、撮影の前に文書で決めておきましょう。 詳しくは、この後の 8 でまとめて扱います。

6. 動画を入れるかどうかの判断

動画が向くのは、動き・手順・人柄・空気感など、言葉や写真だけでは伝わりにくいものを見せたいときです。 逆に、料金・営業時間・注意事項のような「すぐ確認したい情報」は、動画にせずテキストや図で出しましょう。 そのうえで、入れるかどうかは次の点で判断します。

  • 動画は作成コスト・再生負荷が大きい
  • 再生率は思ったより低い(スマホでは再生の手間そのものが負担になり、UX=使い心地の面でも不利)
  • 「動画を入れる」が目的化していないか — 自己満足の罠
  • 入れるなら短く(60 秒以下推奨、音なしでも分かるように字幕)
  • 利用シーン制約を確認(屋外で見られない、音出せない、集中できない時間)

7. 写真・イラスト・動画の統一感を保つ運用

素材のトーンがバラバラになるのを防ぐには、次の 3 つを仕組みにしておきます。

  • 撮影ガイドラインを業者と作り、引き継ぎ資料に含めてもらう
  • CMS(自分でページを更新する仕組み)での更新時に、素材選択のルールを決めておく(第4章 Lesson 3 の統一感の話と同じです)
  • 半年ごとに素材を見直す(トーンのずれ・古くなった写真の点検)

8. 素材は「運用資産」 — 権利・許諾・退職後扱いまで含めて管理する

素材は「一度作って終わり」ではなく「運用資産」

写真や動画は、数年単位で使い続けます。 入退社で人が変わり、流用先が増え、ライセンス期間も動きます。 一度作って終わり、ではなく 運用資産 として管理する発想が必要です。

必ず文書化する 7 観点

  • ライセンス・使用権の範囲(Web のみ / 印刷 / SNS / OOH 広告〈駅・看板・交通広告などの屋外広告〉 / 海外)
  • 肖像権(出演者・通行人・社員家族の写り込みまで)
  • 撮影許諾書(出演者から撮影前に取る、文面は法務に確認)
  • 二次利用範囲(他媒体への流用、外部委託先への提供、AI 学習素材化)
  • 退職後の扱い(社員写真の継続使用、本人申出時の差し替え期限)
  • 使用期限(契約期間、撮影日からの年数)
  • 出典・クレジット表記の要否

ストック画像の管理

  • ライセンス書類の保管
  • 再使用時の確認(契約満了に注意)
  • 商用利用範囲(SNS、印刷物への流用可否)

中小企業ほど油断する領域

社員入退社で写真の差し替え忘れ、契約満了素材の使い続け、SNS への無断流用 — これらは中小企業で頻発します。 規模が小さいほど運用ルールが緩く、後から問題化します。

担当者の仕事 — 文書化と保管

ここは業者任せにせず、担当者が押さえておきたいところです。 契約終了時には、データ・書類の引き継ぎを忘れずに受け取りましょう。 退職や契約終了のタイミングで素材棚卸しの仕組みを作っておくと、リスクを大幅に減らせます。

9. 担当者が業者に素材を発注するときの伝え方

  • 「どう感じさせたいか」を伝える(例:「採用ページの社員紹介で、安心感と話しかけやすさが伝わる写真がほしい」)
  • 「ユーザーの利用シーン」を伝える(例:「通勤中にスマホで見る人が多いので、小さくても伝わる構図で」)
  • 写真ごとに「役割」を発注する(見栄えではなく機能で頼む)
  • 写真の使用範囲を事前に合意する(先ほどの 7 観点を契約に明記)

迷ったら、「掲載場所/目的/見せたい印象/避けたい表現/必要カット/使用範囲/納品形式」 を 1 枚にまとめて渡すと、認識のズレが一気に減ります。

ビジュアル選びは、最初は「なんとなく良さそう」で迷ってしまうものです。 でも「どう感じさせたいか × 利用シーン」という軸と、「この写真がなかったら何が伝わらなくなる?」という問いを持っているだけで、選び方はぐっと楽になります。 そして撮った素材を運用資産として大切に管理していけば、後からのトラブルもしっかり防げます。 一枚ずつ役割を考える積み重ねが、サイト全体の説得力につながっていきます。 焦らず、自社らしいビジュアルを少しずつ育てていきましょう。