写真・イラスト・動画 — 「感じさせ方 × 利用シーン」で選び、間を埋める写真は手放す
この記事でわかること
- 写真・イラスト・動画を「感じさせ方 × 利用シーン」で選ぶ考え方
- 動画が 利用シーンを限定する 理由(音と画面集中が必要で、屋外・隙間時間に弱い)
- 一番のやらかし「間を埋める写真」がなぜ訴求力を失うのか
- 自社人物撮影で気をつけたい 服装・髪形 のポイント
- 素材を 「運用資産」として管理 する観点(権利・肖像権・撮影許諾・退職後扱いまで)
Lesson 5-2 でコピーを扱いました。 この Lesson はビジュアル素材(写真・イラスト・動画)の話です。 Web サイトのビジュアルは「とりあえず入れる」になりがちですが、本書は明確な選定軸と、見落とされがちな運用資産としての管理を扱います。
1. 選定軸 — 「感じさせ方 × 利用シーン」で選ぶ
1-1. 一律ルールは禁物
「写真 vs イラスト vs 動画、どれが正解?」という問いは、答えがありません。 業種・商材・ターゲットで最適解が全く違うからです。
1-2. 「ユーザーにどう感じさせたいか」で選ぶ
- 写真:リアルな印象、信頼、実在感
- イラスト:抽象化、概念の説明、親しみ、わかりやすさ
- 動画:深い理解、ストーリー、空気感
1-3. 「ユーザーの利用シーン」で選ぶ
Lesson 4-4「利用シーン」と完全連動します。
- 動画は音が出ると屋外で再生しにくい
- 動画は画面集中が必要 → 利用シーンが限定される
- スマホで隙間時間ユーザーには動画は重い
1-4. 業種 × 感じさせたい印象 × 利用シーンの掛け算で決まる
最終的な素材選択は、3 つの軸の掛け算で決まります。 一律のルールではなく、案件ごとに考える必要があります。
2. 写真・イラスト・動画それぞれの特性
2-1. 写真の特性
リアル、信頼、人物・場・物、「ここに本当にある」感を伝えます。 実在性のある対象を扱うときの第一選択。
2-2. イラストの特性
抽象化、概念図、親しみ、説明補助、トーンコントロールしやすいのが特性です。 複雑な概念を分かりやすく伝えたいときに活きます。
2-3. 動画の特性
深い理解、ストーリー、空気感を作れます。 一方で、再生コストと利用シーン制約があるので、使い所を選びます。
3. 一番のやらかし — 「間を埋める写真」は訴求力を失わせる
3-1. 「文字ばかりだと寂しいから写真を入れる」が罠
新米担当者がやりがちな罠です。 装飾目的の写真は中身がなく、訴求力を失わせます。
3-2. 本文と写真がマッチしていないと、読者の頭が混乱する
文章で「効率化」を語っているのに、写真が無関係な人物笑顔だと、訴求がブレます。 読者は「何の話だっけ?」と一瞬考えてしまい、集中力を失います。
3-3. 「とりあえず写真」は何も伝えていない
容量だけ食って、メッセージは薄れます。 むしろ写真を入れないほうが伝わるケースも多いです。
3-4. 全写真に「本文との役割」を持たせる
すべての写真に、本文との明確な役割を持たせたいところです。
- 説明を補強する写真
- 信頼を作る写真(実人物・実物)
- 感情を喚起する写真
3-5. 判定の問い
各写真について、こう問うてみましょう。 「この写真がなかったら、何が伝わらなくなる?」。 答えられないなら、その写真はなくても大丈夫。思いきって外してしまいましょう。
4. ストック画像 vs オリジナル撮影の判断
4-1. ストック画像で OK なケース
補助的な抽象表現、汎用イメージ — このあたりはストック画像で問題ありません。
4-2. オリジナル撮影必須のケース
自社人物、自社製品、現場、信頼を作る箇所 — ここは必ずオリジナル撮影です。 ストック画像で「自社」を装うのは、ユーザーに見抜かれます。
4-3. ストック画像の選び方
- 他社が使っていないか確認(競合と同じ画像は致命的)
- ライセンス確認(Lesson 3-5 連動、商用利用範囲)
4-4. ハイブリッド戦略
重要箇所は自社撮影、補助はストック、というハイブリッドが現実解です。 コスト面でも、メリハリのある投資ができます。
5. 自社で撮影・制作するときの担当者の関わり
5-1. 撮影前:構成・カット割りを業者と詰める
撮影の構成とカット割りは、事前に業者と詰めておくと安心です。 当日に決めようとすると時間が足りなくなりがち。 業者にカット表を出してもらうのがおすすめです。
5-2. 撮影当日:出演者(自社の人)の緊張を解く
実在の社員が出ると信頼が生まれます。 担当者が「場の温度」を作る役回りです。 会話で和ませて、自然な表情を引き出していきましょう。
5-3. 服装・髪形の準備
本書の独自視点です。 本人は綺麗な服を着ているつもりでも、写真ではシワが目立ったり、地味な印象になりすぎる ことがあります。 髪形も同様です。 事前に服装ガイド(色・無地推奨など)を出演者に伝えておくとスムーズです。 しっかり撮りたいなら スタイリストの検討 も視野に入れてみましょう。
5-4. 使用権・肖像権・契約の整備
Lesson 3-5 と連動します。 撮影した写真をどこまで使えるか(Web、印刷、SNS、退職後)を、事前に文書化しておきましょう。 H2-8 で詳しく扱います。
6. 動画を入れるかどうかの判断
- 動画は作成コスト・再生負荷が大きい
- 再生率は思ったより低い(モバイル UX 観点)
- 「動画を入れる」が目的化していないか — 自己満足の罠
- 入れるなら短く(60 秒以下推奨、音なしでも分かるように字幕)
- 利用シーン制約を確認(屋外で見られない、音出せない、集中できない時間)
7. 写真・動画の統一感を保つ運用
- 撮影ガイドライン(Lesson 3-5 連動)
- CMS 更新時の素材選択ルール(Lesson 4-3 連動)
- 半年ごとの素材監査
8. 素材は「運用資産」 — 権利・許諾・退職後扱いまで含めて管理する
8-1. 素材は「一度作って終わり」ではなく「運用資産」
写真や動画は、数年単位で使い続けます。 入退社で人が変わり、流用先が増え、ライセンス期間も動きます。 一度作って終わり、ではなく 運用資産 として管理する発想が必要です。
8-2. 必ず文書化する 7 観点
- ライセンス・使用権の範囲(Web のみ / 印刷 / SNS / OOH 広告 / 海外)
- 肖像権(出演者・通行人・社員家族の写り込みまで)
- 撮影許諾書(出演者から撮影前に取る、文面は法務に確認)
- 二次利用範囲(他媒体への流用、外部委託先への提供、AI 学習素材化)
- 退職後の扱い(社員写真の継続使用、本人申出時の差し替え期限)
- 使用期限(契約期間、撮影日からの年数)
- 出典・クレジット表記の要否
8-3. ストック画像の管理
- ライセンス書類の保管
- 再使用時の確認(契約満了に注意)
- 商用利用範囲(SNS、印刷物への流用可否)
8-4. 中小企業ほど油断する領域
社員入退社で写真の差し替え忘れ、契約満了素材の使い続け、SNS への無断流用 — これらは中小企業で頻発します。 規模が小さいほど運用ルールが緩く、後から問題化します。
8-5. 担当者の仕事 — 文書化と保管
ここは業者任せにせず、担当者が押さえておきたいところです。 契約終了時には、データ・書類の引き継ぎを忘れずに受け取りましょう。 退職や契約終了のタイミングで素材棚卸しの仕組みを作っておくと、リスクを大幅に減らせます。
テンプレ DL:素材ライセンス・許諾管理シート、退職時 素材棚卸しチェックリスト(本書のテンプレ集に収録予定)
9. 担当者が業者に素材を発注するときの伝え方
- 「どう感じさせたいか」を伝える
- 「ユーザーの利用シーン」を伝える
- 写真ごとに「役割」を発注する(=見栄えではなく機能)
- 写真の使用範囲を事前合意(H2-8 と連動して契約に明記)
ビジュアル選びは、最初は「なんとなく良さそう」で迷ってしまうものです。 でも「どう感じさせたいか × 利用シーン」という軸と、「この写真がなかったら何が伝わらなくなる?」という問いを持っているだけで、選び方はぐっと楽になります。 そして撮った素材を運用資産として大切に管理していけば、後からのトラブルもしっかり防げます。 一枚ずつ役割を考える積み重ねが、サイト全体の説得力につながっていきます。 焦らず、自社らしいビジュアルを少しずつ育てていきましょう。