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第3章 Lesson 2 / 読了 約13分

RFP(提案依頼書)の書き方 — Why を厚く、予算と要件のバランスを取る

この記事でわかること

  • RFP は何のために書くのか
  • RFP に盛り込む必須要素
  • 提案の質を左右する「要件と予算のバランス」
  • 業者からの質問対応と、公平な比較の作り方

第3章 Lesson 1 で業者選びの全体像を整理しました。 この Lesson で扱うのは、業者に提案を依頼するための文書 — RFP(Request For Proposal、提案依頼書)の書き方です。 実は、業者から出てくる提案の質は、RFP の質でほぼ決まります。 「何を作るか」より「なぜ作るか」を厚く書く。この姿勢だけで、提案は見違えるほど良くなります。

1. RFP は何のために書くのか

RFP が無いと起きること

RFP を作らずに口頭だけで「提案をください」と頼むと、各社の提案は前提からバラバラになります。 A 社はコーポレートサイトリニューアル案、B 社は新規 LP(広告やキャンペーン用の 1 枚完結ページ)の案、C 社は SEO コンサルの案 — というように、そもそも同じ土俵に乗っていないので、並べても比較のしようがありません。

RFP のゴール

RFP のゴールは、提案の出発点を揃え、公平に比較できる状態を作る こと。これに尽きます。 立派な文書を作ること自体が目的ではありません。 どの業者も同じ前提で提案できるスタートラインを引く、そのための道具です。

業者を細かく縛るためではない

分厚い要件書を作って業者に押し付ける、というのは RFP の本来の姿ではありません。 要件でがちがちに縛ってしまうと、業者の創意工夫の余地が消えて、どの提案も似たり寄ったりになってしまいます。 縛るのではなく、揃える。この意識で書いていきましょう。

2. RFP の必須要素 — Why を厚く、What は適切に

RFP に盛り込みたい要素を順に見ていきます。 前半(事業背景〜競合)が「Why」、後半(スコープ〜評価基準)が「What」にあたります。

事業背景

会社の概要、事業のフェーズ、そして「なぜ今 Web に投資するのか」。 業者が自社の事情を理解したうえで提案するための、土台になる情報です。

サイトの目的(なぜ作るのか)

第2章 Lesson 1 で言語化した「4 つの問い」と、第2章 Lesson 4 で決めた KGI / KPI(最終目標と、その途中指標)を、ここに書き写します。 第 2 章の積み上げがそのまま活きる、RFP の中で最も重要なセクションです。

ターゲット

第2章 Lesson 2 で作ったペルソナを共有します。 BtoB なら「使う人 / 決める人」の意思決定マップも添えると、提案の精度が上がります。

競合と差別化

第2章 Lesson 3 で行った競合分析の結果を共有します。 自社のポジションと「どこで差を出したいか」が伝わっていれば、提案の方向がブレません。

想定スコープ

スコープ(今回どこまでを制作会社に依頼するか)です。ページ数の目安、必要な機能、CMS(WordPress など、社内でページを更新する仕組み)の要否などを書きます。 「必須の機能」と「あるとよい機能」を分けて書くと、業者に優先順位が伝わります。

スコープ外

「やらないこと」も明示します。 これが意外と効きます。 提案が想定外の領域へ広がるのを防げますし、契約後の「それは含まれているはず」「いえ含まれていません」というすれ違いも減らせます。

予算レンジ・期間

予算と期間の目安です。予算は隠さず、レンジ(幅)で示すのが基本です。 その理由と、見えないときの書き方は、次の 3 章でまとめて扱います。

評価基準

提案をどう評価するかを、先に業者へ伝えておきます。 例えば「価格 30% / 提案の質 40% / 体制 30%」のような重み付けです。 評価の物差しが見えていれば、業者は適切な力配分で提案を作れます。

Why を厚く、What も適切に — 両輪で機能する RFP

本書が何より大事にするのは「Why を厚く」書くことです。 ただし、Why に偏りすぎて What が薄い RFP にも落とし穴があります。 提案段階では良い雰囲気で進んだのに、契約後に「どこまでやるのか」「何をもって完成なのか」が決まっておらず、追加見積もりの連続で信頼関係が崩れていく — これが What 不足の典型です。

そこで、スコープまわりに加えて次の項目も無理のない範囲で明記しておきましょう。 検収条件(何をもって完成とするか)、責任範囲(担当者と業者のどちらが何を担うか)、前提条件(法務・個人情報・規制など、企画段階で確認した制約)、そして NDA素材ライセンスといった 契約の前提(第3章 Lesson 5 につながります)。

Why が提案の方向性を決め、What が仕事の境界線を決める。 両方が揃って初めて、契約後もスムーズに走れる RFP になります。

3. 提案の質が伸びない原因は「要件と予算のバランス」

RFP をきちんと作ったのに提案の質が今ひとつ — その原因は、ほとんどの場合「要件と予算のバランス」にあります。

高い要件 × 低い予算

要件は高いのに予算が低いと、業者はまともな提案を出せません。 出てくるのはコストカットの工夫ばかりの提案か、あるいは安さだけが取り柄の業者だけ、という状態になります。

低い要件 × 高い予算

逆のパターンも問題です。 要件がささやかなのに予算が大きいと、業者は予算に合わせて 過剰な提案 をしてきます。 使わない機能や不要に凝った演出が盛り込まれ、最後は経営層から「これは何のためにあるの?」と問われて、承認が下りなくなります。

適正バランスの見つけ方

バランスを取るためにやることは 3 つです。 まず、他社事例や業者へのヒアリングで業界の相場感を掴む。 次に、「この目的なら、このくらいの予算が要りそうだ」という仮説を立てる。 そして、業者に予算レンジを正直に提示する。 この 3 つが揃うと、要件と予算が噛み合った提案が返ってくるようになります。

「予算を隠す」が逆効果になる理由

予算を隠すと、業者は「見当違いの金額を出して外したくない」と考え、無難で守りに入った提案しかしてこなくなります。 思い切った差別化提案は、予算の当たりが付いているからこそ出せるものです。 予算を見せることは、弱みを見せることではなく、提案の幅を現実的に広げるための重要な情報なのです。

予算が見えない場合の書き方

社内的に確定値を出せない場合は、「予算 ◯◯〜◯◯ 万円」と幅で示すか、「この範囲内で最大の提案をお願いします」という書き方でも構いません。 避けたいのは、完全な非公開だけです。

「予算を出す」の例外条件

なお、中小企業の標準的な案件では「予算を出す」が合理的ですが、例外もあります。 公的機関の調達案件や上場企業の調達部を通す案件では、公平性担保のために予算開示の形式がルールで決まっていることがあります。 また、予算がまだ経営会議の承認待ち、という段階で具体額を開示すると、後で数字が動いたときに揉める元になります。

そうした場合は、「概算・目安」として幅で開示する、提案の質を見てから具体予算を共有する(段階開示。タイミングを分けて情報を出す)、「予算範囲内で最大の提案を」型に切り替える、といった形が現実的です。 調達ルールが絡む判断は、担当者一人で抱えず、調達部・法務・経営層に確認しながら進めましょう。

4. RFP のひな形(本書版)

分量は A4 で 5〜10 ページ が目安です。 薄すぎると前提が揃わず、厚すぎると読まれません。 章立てと「何を書くか」「記入例」を、次の表にまとめます。そのまま下書きの型として使えます。

書く内容記入例
事業背景会社概要・事業フェーズ・なぜ今 Web か創業 15 年の BtoB 製造業。新規開拓を強化する方針で、問い合わせ導線を刷新したい。
目的・KPI「4 つの問い」と KGI / KPI主力サービス A の資料請求を、月 10 件 → 月 25 件に増やす。
ターゲットペルソナ/BtoB は意思決定マップ導入を検討する生産管理担当(使う人)と、決裁する部長(決める人)。
競合と差別化競合の状況と、どこで差を出すか競合は価格訴求が中心。自社は導入事例の豊富さで差別化する。
スコープ・スコープ外必須/あるとよい/今回含めない必須:問い合わせフォーム・事例ページ/あるとよい:資料 DL/含めない:多言語対応。
予算レンジ・期間上限・希望公開時期・承認状況概算 300〜500 万円。10 月公開希望。最終額は 8 月の役員会で確定予定。
評価基準比較の重み付け提案の質 40% / 体制 30% / 価格 30%。
提出物・スケジュール提出形式・提出期限・質問期間提案書(PDF)を 3 週間後まで。質問は最初の 1 週間で受付。

RFP は、書いて終わりではありません。ここからは、送付前の社内合意・質問対応・機密情報の扱い まで設計しておきます。ここを整えておくと、提案の比較が最後まで崩れません。

5. RFP を業者に送る前のチェック

社内決定権者の合意が取れているか

RFP を送る前に、社内の決定権者の合意を取っておきましょう。 合意のないまま送ってしまうと、提案が出揃った後になって「これは方向性が違う」という声が上がり、業者を巻き込んだまま進行が止まってしまいます。 第2章 Lesson 1 で整理した「誰がどう決めるか」を、ここでもう一度確認しておくと安心です。

評価基準を社内で合意してから送る

評価基準は、提案を受け取る に確定させておきます。 提案を見てから基準を決める(変える)と、特定の業者に有利なように後から調整できてしまい、公平な比較が崩れるからです。

スケジュールが現実的か

提案の準備期間は 2〜3 週間 が目安です。 1 週間で求めれば雑な提案しか上がってきませんし、1 ヶ月以上空けると業者の熱が冷めてしまいます。

6. 業者からの質問対応の設計

質問期間を設ける

RFP を送ったら、業者からの質問期間を 1 週間ほど設けましょう。 質問の機会がないまま提案を作らせると、誤解した前提のまま突き進まれるリスクがあります。

質問と回答を全業者に共有

ある業者から受けた質問と、その回答は、すべての業者に共有 します。 1 社だけが追加情報を持っている状態は不公平ですし、公平さが崩れると比較そのものの意味がなくなってしまいます。

質問の質で業者の本気度が見える

質問対応には、思わぬ副産物があります。 質問の質に、業者の本気度がにじみ出るのです。 「なぜ」を掘り下げる鋭い質問をくれる業者は、Why を理解しようとしている証拠。 逆に、質問がまったくない業者や定型的な確認だけの業者は、少し注意して見ておきましょう。

7. 秘密保持契約(NDA)のタイミング

事業の数字、未公開の戦略、顧客に関わる情報 — こうした機密性の高い情報を RFP に載せるなら、送付前に NDA(秘密保持契約)を結んでおきましょう。 RFP は複数の業者に配る文書なので、渡した情報は「外に出た」前提で考える必要があります。

簡易なひな形の NDA で十分です。 社内法務や顧問弁護士にひな形を用意してもらっておくと、案件のたびにすぐ使えて便利です。

8. やってはいけない RFP

最後に、避けたい RFP のパターンをまとめておきます。

  • 責任を業者に押し付ける書き方:契約段階で必ず揉めます
  • 「お任せします」だけの丸投げ:前提がないので、業者はかえって提案できません
  • 予算の完全非公開:無難な提案しか出てこなくなります
  • 評価基準を最後まで隠す:業者が力の入れどころを間違えます
  • スコープ外を書かない:後になって「これは含まれていません」のすれ違いが起きます

RFP は、最初から完璧に書けるものではありません。 まずは Why を厚く、What は無理のない範囲で書いてみて、業者からの質問を通して少しずつ精度を上げていけば大丈夫です。 予算をオープンにして対話すれば、比較しやすい具体的な提案が返ってきます。 一通り書けたら、それがもう第一歩です。落ち着いて、目的を起点に組み立てていきましょう。