第1章 Lesson 1-2 / 読了 約11分

Webサイトの種類と特徴 — 8 種類を知り、自社サイトの立ち位置を掴む

この記事でわかること

  • 「ホームページ」と「Webサイト」の違い
  • 9 つの種類のWebサイト
  • Webサイトの違いで変わるWeb担当者のお仕事
  • オウンドメディアの注意点と運用のコツ
  • Webコンテンツの価値を決める「独自情報 × 業務支援」

Lesson 1-1 で「Web担当者はWebコミュニケーションを管理する人」と捉えましたが、Webコミュニケーションも、その「Webサイトのタイプ」によって形が異なります。 それぞれのWebサイトの特性を理解しておかないと、KPI の置き方も、業者選びの軸も決まりません。 この Lesson では、種類の分類、そして AI 時代の独自情報の話まで一気に整理します。

1. 「ホームページ」と「Webサイト」は別物?

1-1. 本来の言葉の意味

用語の出発点を、まず正しく押さえておきましょう。 「ホームページ」とは、本来 サイトのトップページ 1 ページ を指す言葉でした。 家のリビングのように、訪問者を最初に迎える場所、という意味合いです。 スマホなどでも「ホーム」という言葉を使いますが、これがスマホの最初の 1 画面を指すのと同じで、Web における「ホーム」も、トップページを指す言葉になります。 一方「Webサイト」は、トップを含む 全ページの集合体 を指します。 「サイト」と言うときも、基本的にこの「Webサイト」とイコールだと考えて構いません。 ただし、まとまりとしての定義は曖昧で、1 つの企業にコーポレートサイトEC サイトがある場合、まとめて 1 つと数えることもあれば、役割の異なる 2 つと数えることもあります。

1-2. 一般的な認識と扱い

ここまでが「本来の言葉の意味」ですが、日本では扱いが違います。 世間では、「ホームページ」と言うと「Webサイト全体」の意味で使われている のが実情です。 そのため、わざわざ「ホームページと言うと意味が違う」などと指摘するのは野暮というものです。 傾向として、一般の方ほど「ホームページ」という言葉を使い、Web 業界で仕事をしている人ほど「Webサイト」という表現を使うことが多いように見えます。

1-3. Web担当者としての姿勢

では、Web担当者自身はどう呼べばいいか。 本書では、「Webサイト」という表現を使う ことをおすすめします。 Web担当者として会話する相手は Web 業界関係者が多いので、正確で、業者や社内エンジニアとのあいだで誤解が生じにくい言葉を使うほうが無難だからです。 ただし、相手が「ホームページ」と言っているのに、我を通して「Webサイト」と言い張るのも意地が悪いので、相手に合わせることも大切です。 特に一般の方と会話する場合は、「ホームページ」と表現するほうがコミュニケーションが円滑なことが多いかと思います。

2. 9 種の Webサイトと Web担当者のお仕事

Webサイトといっても、さまざまなタイプがあります。それぞれの特徴に合わせて活用方法が変わり、それに伴って Web担当者のすべき仕事も変わります。種類と主な仕事を理解し、目標達成の指針にしてください。

2-1. コーポレートサイト

会社案内・お知らせ・お問い合わせの窓口になる、いわば「“会社”の顔」です。 一般の消費者というよりも、取引先、投資家、社内のメンバーなどがサイトを閲覧します。 実際の売り物よりも、会社そのものを知ってもらうための情報提供の場です。 そのため、正確さと更新の鮮度 が価値の源泉となります。

Web担当者の主な仕事

更新頻度が高まりやすいのは「お知らせ」や「プレスリリース」です。掲載方法に一定の型があるため、自社スタッフでも簡易的に更新できるよう CMS を導入している企業も少なくありません。会社情報がメインとなるため、広報関連の部署との連携が密になりやすくなります。

2-2. 採用サイト

採用に特化したサイトです。 求職者に向けて、募集要項だけでなく、社風や働く環境、社員の声などを伝え、応募・採用につなげることを目的とします。 コーポレートサイトの一部として最小限の情報提供に留めることもあれば、採用専用サイトとして独立させ、人事に力を入れることもあります。

Web担当者の主な仕事

求職者やその予備群が知りたい情報を整理して魅力的に見せることと、応募までの導線づくりが中心です。求職者の流入を増やすための SEO 対策なども重要となります。人事・採用担当と連携し、募集要項の更新や社員インタビューなどのコンテンツを継続的に用意します。入社後のミスマッチを防ぐため、良い面だけでなく、実際の働き方が伝わる内容を心がける必要があります。

2-3. サービスサイト(商品ブランドサイト)

自社の商品・サービスを紹介して、認知を高めたり、魅力を伝えたり、理解を深めたりすることが目的のサイトです。 BtoB の場合は、主にお問い合わせや資料請求に繋げることが多く、BtoC の場合は、D2C に繋げてオンライン上で販売を完結したり、商品の良さを知ってもらうことで販売店での購入を高めることをゴールとしたりすることが多くなります。 コーポレートサイトの中で情報発信していることもあれば、別ドメインで本格的にブランド訴求しているケースもあります。

Web担当者の主な仕事

BtoB か BtoC かによって異なりますが、基本的には、サービス・製品部門と連携し、その特長や魅力をどう表現すべきかを取りまとめます。一方で営業部門とも連携し、現場でどのような声が上がっているか、どのような訴求が響くのかを把握します。そのうえで制作ベンダーと連携しながら、Web サイトとしての SEO 対策や情報構造も加味して、コンテンツを作り上げていきます。キャンペーンサイトと連動するケースも少なくありません。

2-4. LP(ランディングページ)

Web 広告などを経由して辿り着く、1 ページで完結する 成約特化型 の Web ページです。 1 ページ内で成約までたどり着かせるよう、情報が網羅的に詰め込まれています。 サービスサイトやコーポレートサイトと情報が重複しやすく連携が難しいため、他のページと繋がらない独立したページとして成り立っていることが多く、単ページゆえに SEO も高まりにくいことから、基本的な流入は広告からとなりやすくなります。 サービスサイトとの違いは、1 ページ完結型で少し長めである点。その 1 ページの中で、ユーザーの気持ちを動かす内容と展開がカギになります。

Web担当者の主な仕事

コンバージョン率(CVR)を上げるための改善が中心です。見出しファーストビュー、申込ボタンの位置などを A/B テストで検証し、レポートを解析しながら、成果が上がる形にどんどん近づけていきます。広告の訴求と LP の内容がズレないよう、広告運用の担当者との連携も欠かせません。

2-5. オウンドメディア

主に検索からの集客を目的とした、自社で発信する読み物コンテンツの集合体です。 多くの場合、サービスや商品を直接的に紹介するのではなく、それらに関連する話題や情報を読み物として発信し、最終的に商品・サービスの情報へ繋ぐ「メディア型」の枠組みです。 販売色が薄くなるので、SNS からも人を集めやすくなります。 少しイメージしにくいコンテンツでもあるので、後述の 「3. オウンドメディアと Webサービス」 で深掘りします。

Web担当者の主な仕事

記事の企画と SEO、そして継続的に記事を出し続けるための編集体制づくりが重要な仕事となります。読者の検索ニーズに沿ったテーマを選び、社内の知見を記事に落とし込んでいきます。多くの記事を作ることになるので、ライターと連携したり、記事の内容を会社として公開して問題ないかを各サービス部門や法務部門などと連携して確認したりすることが多くなります。増やし続けていくことが重要なため、書き続けられる仕組みを整えることもかなり重要となります。

2-6. サテライトサイト

本体のサイトとは別に、特定のテーマや商品、キャンペーンなどに絞って立てる「分家」のようなサイトです。 基本的にはドメインも別で、自社サイトとは切り離された存在のように振る舞い、SEO で集客をかけていくことが多いです。 内容としてはオウンドメディアと近い情報を発信しつつ、自社とは切り離されているため、自社では言いにくい情報も発信しやすくなります。 そうした発信内容のため、サイトの管理者は自社ではなく制作ベンダーなどに委ねられていることが多く、あくまで制作ベンダーが用意したサイトという位置づけになります。 こうすることで、別のサイトから自社サイトへの導線ができて自社の SEO も高まりやすくなり、自社では出しにくい角度から検索キーワードを狙っていくことができます。 ただし昨今では、こうした作為的なやり方に対して Google の評価が厳しくなる傾向もあり、費用対効果も含めて実施の判断が難しいサイトでもあります。

Web担当者の主な仕事

本体サイトとの役割分担を明確にし、狙うテーマやキーワードを絞り込むことが中心です。方向性を決め、制作ベンダーと連携して立ち上げます。Google の評価の傾向なども踏まえながら、実施するかどうか自体も、しっかりと相談して決めていく必要があります。

2-7. EC サイト

俗に言う「通販サイト」と呼ばれるものです。 Web サイト上で、商品やサービスをそのままカートなどに入れて決済できるシステムで構築されたサイトが一般的です。 商品データ、カート、決済、在庫連動、顧客管理などがセットになり、日々ユーザーとの取引が発生しやすいため、メンテナンスも含めて運用負荷が高まりやすくなります。 EC サイトのシステムは自社で開発するケースもあれば、SaaS のようなサービスを利用したり、EC-CUBE のようなパッケージを利用したりすることもあります。 個人情報を取り扱うため、セキュリティには十分な配慮が必要となります。 運用面での KPI は CVR(成約率)・客単価・リピート率が中心となります。

Web担当者の主な仕事

日々、顧客の取引をキャッチしながら、商品情報のアップデートや在庫管理など、メンテナンスが欠かせなくなります。売上に直結するサイトなので、トラブル(カートが機能しないなど)には細心の注意が必要で、何かが起きればすぐに対処しなければなりません。さらに、セキュリティがかなり重要なため、定期的にセキュリティレベルのチェックも必要となります。

2-8. Webサービス / SaaS

Slack、freee、Notion のような SaaS、会員制サービス、便利ツール系など、Web サイトという感覚よりも、Web 上のアプリケーションというような感覚のサイトが対象となります。 こちらも後述の 「3. オウンドメディアと Webサービス」 で深掘りします。 情報を獲得するサイトというよりは、ブラウザ経由で利用しているアプリという感覚なので、毎日アクセスするような、利用頻度の高いものが多くなります。

Web担当者の主な仕事

ツールとしての役割が大きいため、使い続けてもらうための定着支援や使いやすさが重要で、随時アップデートしながら DAU(1 日あたりの利用者数)を高めることが KPI となります。新規ユーザーの獲得には LP が用いられることが多いです。新規獲得を増やすことも重要ではあるものの、既存ユーザーの解約をいかに防ぐかが成功のポイントになります。

2-9. ポータル / キャンペーンサイト

ポータルサイトは、特定のジャンルや地域などの情報を一箇所に集約して提供するサイトで、キャンペーンサイトは、期間限定のプロモーションのために立てる特設サイトです。 どちらも、コーポレートサイトやサービスサイトとは異なり、話題喚起や情報集約といった独自の役割を持ちます。 キャンペーンサイトは継続運用というよりも、企画ごとに立ち上げて、終了とともに閉じる動き方が多いのが特徴です。 一方でポータルサイトは、集めた情報量と更新性が価値の源泉となり、広告収益やマッチングを目的とすることもあります。

Web担当者の主な仕事

キャンペーンサイトでは、企画ごとの立ち上げと、SNS や広告などでの拡散設計が中心になります。期間限定で立てて閉じることが多いため、公開期間中の運用フローと、終了後の扱い(残すか、閉じるか、リダイレクトするか)を最初に決めておくことが大切です。一方でポータルサイトでは、情報を継続的に集めて更新し続ける仕組みづくりと、ユーザーが目的の情報にたどり着きやすい設計が重要になります。いずれも、何をもって成功とするかを企画段階で握っておくことが欠かせません。

タイプ具体例主な目的主な KPI
コーポレートサイト会社案内・お知らせ・IR信頼形成・会社情報の発信更新の鮮度・問い合わせ数
採用サイト募集要項・社員紹介・社風採用応募の獲得応募数・エントリー率
サービスサイト / 商品ブランドサイト製品・商品紹介、士業の業務案内認知向上・比較検討・販売促進問い合わせ・資料請求・売上
LP広告からの 1 ページ完結その場の成約CVR・申込数
オウンドメディア業界ノウハウブログ、業界誌系検索からの集客・関連情報の発信SEO 流入・読了率
サテライトサイト別ドメインのテーマ特化サイト外部からの集客・自社サイトへの導線SEO 流入・参照流入
EC サイトネットショップ(通販)オンラインでの販売CVR・客単価・リピート率
Webサービス / SaaSSaaS・会員制サービス・便利ツール継続利用(定着)DAU・解約率・定着率
ポータルサイト / キャンペーンサイト情報集約・期間特設話題化・情報集約PV・SNS シェア

3. Web担当者がつまずきやすい「オウンドメディア」「Webサービス」

9 つのタイプの中で、一番イメージしにくかったのが「オウンドメディア」と「Webサービス」ではないでしょうか。 利用していない企業も多く、実感がわきにくいサイトでもあるので、本パートでは、それぞれの具体例も挙げながら理解を深められるようにしたいと思います。

3-1. オウンドメディアとは

一言で言うと「検索からの集客を狙って自社で発信する、読み物の場所」です。 商品を直接売り込むのではなく、関連する話題や情報で人を集め、SEO や SNS を入口に、最終的に商品・サービス・指名検索へ繋ぐ役を担います。 なぜこうした手法を取るのかというと、広告のように費用をかけ続けなくても、検索や SNS から継続的に見込み客を集められ、積み上げた記事が中長期の資産になるからです。さらに、自社ならではの知見や視点を発信することで、専門性や信頼を伝え、他社と差別化しやすくなります。 雑誌系のメディア、教育系のナレッジサイト、業界のノウハウブログ — このあたりが代表例です。 具体例を 5 つ並べると、次のような広がり方になります。

  • 化粧品ブランドが運営する「美容・ライフスタイル系の読み物サイト」
  • 証券会社が運営する「金融教育系のナレッジサイト」
  • 健康食品メーカーが運営する「健康生活サイト」
  • 食品メーカーが運営する「料理・食材の使いこなしレシピサイト」
  • Web コンサルが運営する本サイト「Web担当者ガイドライン」

共通点は、サイトで商品・サービスを主体とした情報を提供して 「売る」のではなく、まずは商品・サービスの特性に関わりのある、興味関心の高い情報を 「読んでもらう」 ということです。 そして、読んでもらったからこそ、ユーザーのステージ(興味関心の度合い)が変わり、商品・サービスへ繋がりやすくなっています。 この「読み物 → 成約」の橋渡しが、オウンドメディアの本質です。

3-2. Webサービスとは

Webサービスは「使う」サイトと捉える方がわかりやすいかもしれません。ブラウザ上で操作しているだけで、実際はアプリケーションのように利用します。 Webサービスの多くは利用料を必要とするため、サービスに対して契約・登録し、ログインして、何かを操作したり、記録したり、管理したりします。 一部には、サイト内に広告を設置するなどして広告収入で利用料をまかない、登録や契約を不要とし、ログインなども行わずに利用できる Webサービスもあります。 こちらも具体例を 5 つ並べます。

  • AI サービス(ChatGPT など)
  • クラウド会計サービス(freee のような業務基幹型)
  • ドキュメント共有サービス(Notion のような情報整理型)
  • 会員制学習サイト(動画学習講座、有料コミュニティ)
  • 業界特化の便利ツール(請求書作成ツール、見積もり生成ツール、予約管理ツール など)

共通点は、ブラウザ上でアプリケーション(ツール)として利用するという点です。 使い続けてもらうことそのものが価値であり、一度の購入(契約・登録)で完結するのではなく、毎日・毎週・毎月の利用が積み重なって売上になるようなものが多いです。 そのため、担当者としての運用の中心は、サポート対応、機能改善、解約予防が 8〜9 割です(サービス全体で見るとインフラの安定稼働などの割合も大きくなります)。 Webサービスは Webサイトというよりもツールとして捉えられやすいので、Webサイトの一種と言われても掴みにくい要因となっています。

4. オウンドメディアをはじめる前に

SEO での集客を高めたいと考えたとき「オウンドメディアをはじめた方がいいのかなぁ」と思ったり、制作ベンダーなどから「オウンドメディアを作りましょう」と提案されたりします。 しかし、ここで安易にオウンドメディアをはじめてしまうと、その後 1 年〜数年の、ただの運用負債を抱えることになったり、せっかく作ったオウンドメディアが廃墟化したりすることになってしまいます。 そうならないためにも、次の内容を理解して、本当にオウンドメディアを立ち上げられるのかをしっかりと検討するようにしましょう。

4-1. 継続していけるだけの体力があるか

オウンドメディアは、一度作って終わりではなく、記事を出し続けて初めて成果につながります。 つまり、立ち上げよりも「続けられるか」のほうが重要です。 人手・時間・予算といった体力が確保できないのであれば、本格的な検討に入るのは、まだ早いと考えても良いかもしれません。

4-2. AI オーバービュー時代の常識と独自情報

オウンドメディアを運営していく場合は、記事のネタとして「独自情報」がかなり重要となります。 なぜ独自情報が重要なのか。理由は、AI 検索の浸透です。 Google の AI Overview、ChatGPT や Claude などの AI 検索 — これらが 「コモディティ情報(一般的にありふれた情報)」をまとめて答える 時代に入っています。 「○○とは何か」「××の使い方」「△△の費用相場」のような、ちょっと Web で調べるだけで情報が獲得できるような一般論は、検索すらされずに AI の答えで完結してしまいます。 つまり、どんなにコモディティ情報を量産しても、検索エンジンからの流入は期待できないのです。 だからこそ、AI には書けない「自社だからこそ出せる独自情報」が、これからのオウンドメディアの生命線になります。 誰でも書ける一般論ではない情報(非コモディティ情報)となる独自の情報や視点があるかどうかが、オウンドメディアの価値を大きく左右します。

4-3. 独自情報になりうるもの

では「独自情報」とは具体的に何か。 自社が持つ次のような材料が、独自情報の一例になります。

  • 自社の取引データ・販売データ(社内に眠っている数字)
  • 顧客の生の声(問い合わせ・アンケート・商談で出てきた言葉)
  • 業界の生の現場感(自社が現場で見てきた実感、業界の暗黙知)
  • 製造プロセスや調達のこだわり(他社が真似できない内側の話)
  • 失敗談を含む実体験(きれいごとではない、リアルな顛末)

これらは、AI が一瞬で要約できない情報です。 なぜなら、Web 上に出回っていない情報だからです。 だからこそ、自社で言語化して発信する価値が生まれるのです。

4-4. 独自情報を作り続けられるか

オウンドメディアは、継続的な情報の追加が重要となります。それは情報の鮮度に関わるからです。 普遍的な情報もありますが、古い情報はその信頼性を下げてしまいます。今がどうなのかが、情報の正確性に関わると判断されます。 そのため、オウンドメディアにおいては、独自情報を発信し続けていく必要があります。 今、目の前には独自情報があるかもしれませんが、今後も 新しい独自情報を生み出し続ける仕組み作り ができているのかどうかも重要なポイントになります。 社内取材・現場ヒアリング・顧客インタビューなどを毎月の運用に組み込み、独自情報を継続的に作り出せる体制があってはじめて、オウンドメディアは続いていくことができるのです。

4-5. 体制を保持できるか

ネタ(独自情報)があっても、それを記事にして発信し続ける労力がなければ、何も生み出せません。 「体制を保持できるか」は確実に保証できるものではありませんが、そもそも人員の割り当てが少なかったり、異動が激しかったりすると、体制を保ち続けるのは難しくなります。 立ち上げ時の勢いだけで判断せず、数年単位で運用を続けられる体制があるかを、冷静に見極めておきたいところです。

4-6. 実施を判断する 5 つのものさし

ここまでの観点を、実務では次のものさしでスコアリングしてみると判断しやすくなります。

  • 独自情報:記事のネタとなる独自情報を、継続的に出せるだけ持っているか(月に最低でも 3〜4 本は公開できないと、オウンドメディアとしては弱い可能性があります)
  • 更新体制:月に 3〜4 本以上の記事を作成し、公開できる体制があるか
  • 人員スキル:編集・ライティング・取材・撮影を担う人を確保できるか
  • 予算:継続的に捻出できる予算を割り当てられるか
  • 期待期間:成果が出るまで待てるか(オウンドメディアの一般的な立ち上がりは半年〜1 年)

5. AI 時代の Web コンテンツの価値

前述の 「4. オウンドメディアをはじめる前に」 で見たとおり、AI 時代に通用するコンテンツの中心は「自社独自の情報・視点」です。これは本書全章を貫く主軸です。ただし、Web コンテンツの価値はこれ一本だけではありません。あくまで独自情報というのは、AI オーバービューや AI 検索の影響による流入減少に対しての、明確な取り組み方法の 1 つであって、コモディティ情報自体に価値がないわけではありません。

5-1. 独自情報・独自視点(非コモディティ情報)

検索流入、指名検索、AI 時代の差別化 — これらを担うのが独自情報のコンテンツです。 ユーザーの声やインタビュー、開発秘話、社員のコメント、体験談、自社ならではのサービス特徴などがここに入ります。 AI Overview やゼロクリック検索に代替されにくい、という性質を持つのが特徴で、検索からの一定の集客と自社のアイデンティティを確保するうえでも、今後非常に重要になる情報です。

5-2. 伝えるべき当たり前の事(コモディティ情報)

一方、独自情報じゃないからといって、価値がないわけでもありません。 非コモディティ情報のみでは、ページとして偏った情報のみになってしまい、ユーザーに対して全体が見渡せる形で情報を理解してもらうことができなくなります。 さらには、必ずしも検索流入だけがすべてではなく、たとえば、営業が名刺交換した相手が、その会社を調べるために Webサイトを訪れることもあります。そのときに、一般的なことも網羅して書いていないと「一般的なことなのに書いていないということは、できないのでは?」と思われてしまいます。

また FAQ など、コモディティ情報であったとしても、自社で明確なものを発信していないと、AI 検索の結果として、どこか知らないブログに掲載されている情報が採用されてしまうかもしれません。それでは AI 検索から誤った情報が伝わってしまいます。これは自社のブランドを大きく傷つける原因にもなりかねません。

AI 検索の時代だからこそ、検索以外からの流入も重要になりますし、そういう人たちにこそ、コモディティ情報も含めてしっかりと理解してもらう必要があるのです。

5-3. コモディティ情報と非コモディティ情報で補完しあう

この 2つは対立する関係ではなく、補完しあう関係です。 独自情報は「サイトに人を呼ぶ力」「指名検索・SEO・AI 時代の差別化」を担います。 一方、コモディティ情報は「サイトに来た人を成果に変える力」「商談率・採用率・顧客成功率・CV」を担います。 どちらか片方だけでは Web は機能しません。 両方を意識的に設計するのが基本姿勢です。

5-4. コモディティ情報で大事なページ

料金表、営業時間、問い合わせフォーム、FAQ、会社概要、アクセス、採用要項 — これらに独自情報を盛り込む必要性はありません。 むしろ、余計なことを盛り込むと、かえってわかりにくくなります。 こうしたページの価値は、企業の情報としての正確さ・わかりやすさ・更新の鮮度 にあります。 独自情報が大事だからといって、「独自じゃないから、このページは価値が低い」という読み替えは誤りです。

5-5. 基礎情報を丁寧に整理する価値 — 自社サービス理解の「入口」として

「○○とは」「用語解説」「一般的な仕組みの説明」「入門的な解説」など、基礎情報のページにも独自の価値があります。 これは「コモディティ情報をそのまま量産する」のとは別物で、自社サービスを理解する入口 としての役割です。 業界に詳しい人だけが読者ではないからです。 入門者が「そもそも何の話か」を理解できる土台がないと、いくら独自情報を発信しても、それに辿り着く前に離脱されてしまいます。

基礎情報の整理は、AI 検索で代替されつつありますが、自社サイト内に「理解の階段」を作る 役割はまだ残ります。 自社の文脈・トーン・関連情報への動線をセットにして、訪問者を独自情報や業務支援系のページへ導く。 この「動線としての基礎情報」が、中小企業サイトでは大きな価値を持ちます。 SEO 文脈での扱いは、Lesson 6-6 で深掘りします。

注意:だからといって基礎情報だけを量産すると、独自性を失います(「4. オウンドメディアをはじめる前に」 の主軸を見失う方向)。

5-6. ゼロから作るならどっちを優先するか

ゼロから作るのであれば、情報の基本となる業務支援系(コモディティ情報)から、しっかりと固めるほうがスムーズです。 基本的な Web としての情報として、動き始めることができます。 その土台を作っていると、独自情報も生まれてくると思うので、余力があれば、途中から並行して独自情報も発信するのが良いです。

Webサイトにはさまざまな種類があり、それぞれに目的と、担当者の仕事があります。まずは「どんなタイプがあるか」を頭に入れておけば、サイトの目的に沿って、どんなサイトを作れば良さそうなのか、そのために Web担当者としてどのような行動をとっていくべきなのかがわかってくるはずです。